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ウッドパネルは衝突の際に安全なのか? メルセデス・ベンツの細部に至るまで徹底した「安全性」へのこだわりを解説【メルセデス安全性Q&A】

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TEXT: 妻谷裕二(TSUMATANI Hiroji)  PHOTO: Mercedes-Benz AG/妻谷コレクション(TSUMATANI Collection)

セーフティ・ドアロック・システムとは?

以前のメルセデス・ベンツは、1958年に特許を取得した「セーフティ・コーンタイプのドアロック」を使っていました。この特殊形状のドアロックは太いピンがドア側に、一方ポスト側にはこれを受ける頑丈なボックスが付けられていました。このボックスは中央にドアロックピンをはめ込むテーパー付きの穴が開けられていました。ピンは先が細くなっている円錐型でした。したがって、上下左右から掛かる力にも強いことになっていました。

つまり、雄と雌がガッチリと交わる型になっていたので、ドアを閉めた時にはあのドスッと重量感あふれる音がした要因でもあります。さらに2段階の普通のカギ状ロックが掛かります。以前のメルセデス・ベンツには、このカギ状のロックにこの「セーフティ・コーンタイプのピン」をプラスした2重構造になっていたわけで、いわば「南京錠と心張り棒」を一度にかけた形となり、まさに完全武装したことになります。

このセーフティ・コーンタイプのドアロック方式の場合、セーフティセル構造の客室とあいまって、衝突時にショックでドアが開かないことが多くの実験により実証されました。また、事故が起こっ場合でもメルセデス・ベンツは外部からドアを開き、少しでも速く乗員を救えるようにすることが可能だったのです。

ドアロックにはもうひとつの仕掛けがありました。とくに以前のメルセデス・ベンツはドアの内側には独特の「カウンター・バランス・ウェイト(錘)」が付けられていたのです。外側からドアハンドルを押したり、橫からクルマがぶつかってきた場合、「てこの応用」でこのカウンター・バランス・ウェイトがドアを開かない歯止めの役目を果たすように反対側に傾きます。そしてこのカウンター・バランス・ウェイトが一度傾いたら、どんな衝撃をドアの外側から与えても、ドアは頑として開こうとはしなかったのです。すなわち、ドアハンドルを外側から引っ張った時にだけ、カウンター・バランス・ウェイトも元に戻りドアが開かれることになっていたのです。

最近のメルセデス・ベンツは、ドアをリモコン・キー操作で簡単に開閉でき、ずいぶんと便利になりました。ドアロックの形状は以前より「大型のカギ状ロックと大型キャッチ」になり、しっかりとドアが閉まります。さらに車速が15km/h以上になると、「セントラル・ロッキング・システム」が作動し、ドアとトランクが自動的にロックされます(盗難・暴漢防止対策も兼ねる)。加えて、室内には開閉スイッチがあり、この自動ドアロックを必要に応じて、室内でも開閉できます。

しかも、このセントラル・ロッキング・システムはリアSAMコントロールユニットに「補助クラッシュ・センサー」が増設されていて、事故が起った時には車内のCANバスを介して瞬時に左右のフロント/リアドアのコントロールユニットに、「緊急開放信号」が送信され、ドアロックが解除できます。したがって、外部からドアを瞬時に開くことができ、いち早く客室の乗員を救出できるシステムになっています。

さらに、ドア・アウターハンドルは上から掴み握りやすく、力が入りやすいグリップ形状を採用し、大きな力をかけやすく、引っ張るだけでドアが開き、車外からの救出が容易になります。つまり、指先だけを軽く引っ掛けて開く「はね上げ式」のものとは、発想が違うのです。

万一の衝突時に、シートが倒れたりすることは?

シートは快適であり、安全な運転姿勢がとれることも必要でありますが、もし万一事故の際には乗員を保護するものでなければなりません。快適で安全な運転姿勢や乗車姿勢を作り出すためのシートアジャスト・システムなど可動部分が多いほど、衝撃を受けてシートが壊れる確率が高くなります。

また、事故のデータでは、シートベルトを着用していてもシートが後方に倒れ、後面のリアウインドウを突き破り車外へ放出されるといった事故事例があります。この事故事例は割合として少ないものの、メルセデス・ベンツの安全性からいえば、決して見逃すことはできません。

そこで、メルセデス・ベンツはシートをスライドさせるガードレールをモノコックボディの強化された部分に取り付け、そのガードレール上に非常に頑丈な鋼鉄製「シートサブフレーム」を設置しています。

フロントシートバックの角度を調整するリクライニングシステムも、一般にはシートの片側にギアを備えたものが多く見られ、衝突時の衝撃でシートが倒れるといった事例がありますが、メルセデス・ベンツはギアシステムを左右両側に備えて強度を高めています。

こうした対策により衝突時にシートがしっかり固定されているため、シートベルトの効果が最大限に発揮されます。これらのシステム強度は法規制に合わせたものではなく、事故調査やクラッシュテストによりメルセデス・ベンツが独自に設定したものです。

衝突の際、フットペダルで足をケガしたりすることはない?

各車にはエアバッグが標準装備されています。それは確かに大切なことですが、エアバッグは足元の安全性までは保証してくれません。正面衝突の際、主にブレーキペダルがドライバー側に突き出し、脚部を傷つけるケースがしばしばあることは、メルセデス・ベンツが行った事故調査結果からも証明されています。脚部は、ケガをした場合、リハビリ期間が長くかかるなど、ダメージが想像以上に大きくなりがちです。

まずブレーキペダルは、強い衝撃を受けると、前方に移動してドライバーの足元から離れるように設計されています。つまり、ピボットペダル・アッセンブリーにより、できるだけ、脚や足首のケガを軽減するようになっています。

メルセデス・ベンツは、このような脚部の安全対策も考慮しています(モデルにより構造は異なります)。

それだけではありません。足元のカーペットの下には「ポリスチレン・フォーム製の厚いフロアパッド」が敷かれています。前方からの激しい衝撃、床・フロアパネルが盛り上がる激しい衝撃でも、この衝撃吸収パッドが足首やふくらはぎなどに加わる衝撃を軽減し、ケガを防ぐとともに車外への脱出を可能にしています。このように、目に見えない部分にも被害を最小限にする細心の配慮がなされています。

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  • 妻谷裕二(TSUMATANI Hiroji)
  • 妻谷裕二(TSUMATANI Hiroji)
  • 1949年生まれで幼少の頃から車に興味を持ち、40年間に亘りヤナセで販売促進・営業管理・教育訓練に従事。特にメルセデス・ベンツ輸入販売促進企画やセールスの経験を生かし、メーカーに基づいた日本版のカタログや販売教育資料等を制作。またメルセデス・ベンツの安全性を解説する独自の講演会も実施。趣味はクラシックカー、プラモデル、ドイツ語翻訳。現在は大阪日独協会会員。
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