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「コブラキラー」と呼ばれたデ・トマソ「マングスタ」が約4200万円で落札!リトラとガルウイングが特徴です

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2025 Courtesy of RM Sotheby's

アメリカ仕様車も希少性+リトラクタブルの魅力で価値は低下しない……?

RMサザビーズ「MIAMI 2025」オークションに出品されたデ・トマソ マングスタは、シャシーNo.「8MA0994」。ポップアップ式2灯ヘッドライトを新車から装備していたとされる50台のうちの1台である。

米国で納車された個体ながら、その初期の履歴は現在のところ不明。しかし、2008年までの大半をカリフォルニアで過ごしたとのことである。その年、デ・トマソブランドのスペシャリストである英国のロジャー・ブロットン氏とフィリップ・ステビングス氏が入手し、同じ英国のクライアントに代わってフルレストアを施した。

ブロットン氏は、カリフォルニアでこの車を発見した際に

「これまで見たなかで最高のマングスタのボディシェル」

だったと述べていたように、もとよりコンディションの良い個体をベース車両として、現存するマングスタのなかでも最上級の1台に仕上げるため、費用は惜しまれなかった。

その結果、ガンディーニ流とは異なるジウジアーロ流のウェッジシェイプを黒のカラーリングがみごとに引き立て、赤い内装が鮮烈なコントラストを演出するエキサイティングなカラースキームとなった。

2018年には「ロンドン・コンクール・デレガンス」に出展

また、トレードマークのガルウイング式エンジンカバーの下には、フォード製302キュービックインチV型8気筒とZF製5速トランスアクスルが収まっている。「340ストローカーキット」で排気量アップされ、330psを発生するに至ったという。ファイルされている数多くの請求書やブロットンとのやりとりには、このクルマに費やされた膨大な作業の内容と、約25万ポンドが投入されたことについても仔細に記されている。

2015年のレストア完了後、2018年には「ロンドン・コンクール・デレガンス」に出展されたほか、ランボルギーニ「ミウラ」やフェラーリ「365GTB/4デイトナ」と比較する「Classic & Sports Car」の特集記事でも紹介。そののち2021年には、RMサザビーズ最大のライバルであるボナムズ社がロンドンで開催した「The Bond Street Sale」にて、現オーナーが20万1250英ポンドで落札するに至った。

こうして、13年ぶりにアメリカに戻ったこのマングスタは、そのみごとなレストアぶりで、こんにちも感動を与え続けているとのことである。

RMサザビーズ北米本社は

「デ・トマソの野心的な“コブラキラー”であるこのマングスタは、カーショーで展示するにも、公道で楽しむにも最適」

と謳いつつ、現オーナーと協議のうえ25万ドル~30万ドル(邦貨換算約3750万円〜4500万円)というエスティメート(推定落札価格)を設定することになった。

そして迎えた競売では、エスティメート上限にほど近い29万1000ドル。現在のレートで日本円換算すると約4200万円で、落札されることになったのである。ちなみにこのハンマープライスは、現在におけるデ・トマソ マングスタの相場価格にほぼ準ずるものである。

また、多くのモデルにおけるアメリカ仕様は、外観が大きく変わってしまうことから敬遠されがちなのだが、ことマングスタについてはベルトーネ時代のジウジアーロも試行していたセミ・リトラクタブルのヘッドライトにするなど「スーパーカー的」なアプローチと取れなくもないのが、市場価値を落とさない理由と思われる。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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