要調整のモントリオールは、なかなかの難敵だから……
このほどボナムズ「GOODWOOD Members Meeting 2025」オークションに出品されたのは、英国にデリバリーされたモントリオールの数少ない1台。ただし、このモデルでは右ハンドル車の生産は行われなかったので、英国仕様であっても左ハンドルである。
新車時のボディカラーは「ヴェルデ・ベルトーネ(Verde Bertone:ベルトーネ・グリーン)」に「ネロ(ブラック)」の内装を組み合わせ。1972年に英国に到着し、1973年5月に新車販売されたことがわかっている。また、現在も取りつけられている[WAM 16]は、オリジナルの登録番号と思われる。
今回のオークション出品者でもある現オーナーは、1979年11月9日にこの個体を入手。じつに46年間も所有。1980年代初頭に「アイヴァン・カッセル・カレージ(Ivan Kessell Garages)」によってレストアされた。
このとき、錆で腐食していたロワーパネルとインナーシルが交換されるとともに、シャシーは「ワクソイル(WAXOYL)」加工で錆止めアンダーコート。ボディはモントリオールの純正色「AR602メタリックオレンジ」に再塗装された。
特筆すべきは、現オーナーによって長年保有されているクルマであることから、整備記録を残したヒストリーファイルも、その所有期間中ずっと維持されてきていることである。直近の請求書では「アルファホリック(Alfaholics)」社のステンレススチール製エキゾースト(2015年)、新しいタイヤ(2015年)、修正されたステアリングボックスと新しいトラックロッドエンド(2015年)、新しいブレーキパッド、キャリパー、マスターシリンダーとスリーブシリンダー(2013年)、およびそのほかのメンテナンス作業(2015年)の工賃なども、ファイルに綴じられている。
モントリオールとしては少々低めの推定落札価格を設定
また、整備記録簿にくわえて「アルファ ロメオ・アーカイブ」との製造年月日の確認書簡、古いMoT証明書、「アルファ ロメオ・オーナーズ・クラブ(A.R.O.C)」との間に交わした書簡、「ブラウプンクト(Blaupunkt)」社製ステレオの説明書、オリジナルのアルファ ロメオ純正取扱説明書。当時のディーラーリスト、ワークショップマニュアル、V5C登録証明書、そしてこのクルマについて記された文献なども、すべてオークションでの落札者に託されることになっていた。
ボナムズ・オークション社では、その公式オークションカタログ内で
「一定期間使用されていなかったため、道路に戻す前に通常の安全点検と整備を行うことをお勧めします」
と正直に申告するともに、その整備状況を鑑みてだろうか、3万5000ポンド~4万5000ポンド(邦貨換算約658万円〜846万円)という、現在でのモントリオールとしては少々低めのエスティメート(推定落札価格)を設定。そして4月14日に行われた競売では、3万6800英ポンド。すなわち日本円に換算すると、約710万円で落札されることになったのだ。
近年の国際クラシックカー・マーケットにおけるアルファ ロメオ モントリオールの相場価格は、日本円にして1000万円以上が当たり前のようになり、高価な個体では1500万円オーバーも充分にあり得ている。
翻って今回のオークションの個体は、長年ひとりのオーナーが所有しつつも、近年では休眠状態にあった。それゆえ、とくに「難敵」と噂されるスピカ製インジェクションなど、これから調整・メンテナンスすべき事項が多いであろうことは容易に想像がつく。それらの点を考慮すれば、今回のハンマープライスはとても理に適ったものといえるだろう。

















































