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世界でわずか7台!ワークスマシンのメルセデス・ベンツ「450 SLC 5.0」がオークションに登場!WRC参戦用の希少なモデル

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: Bonhams

1度は解体されつつも、今世紀に入ってフルレストア

メルセデス・ベンツのワークスカー「#626」のその後については、1981年3月27日付で「Verschrottet(廃棄)」と記録されている。今回のオークション出品者でもある現オーナーは、このときいったん解体されたと考えている。

ダイムラー・ベンツ社によるWRCラリー参戦プログラムの終了後、プロジェクトの責任者であるヴァクセンベルガー博士はすべての(部分的に解体された)ワークスカーと設備をアルベルト・プフールなる人物に売却した。情報筋によると、この取引には6台のSLC(「626」を含む)、大量のスペアパーツ、600本のタイヤが含まれていた。

その後は、四半世紀以上にわたって消息を絶つことになる。しかし、2007年になるとスロバキアに本拠を置く「SLCレーシング」社が、ドキュメント類やパーツ、車両を含むすべてのストックを購入したことにより、再び表舞台に姿を現す。

「メルセデス・ベンツ・クラブ・オブ・アメリカ」に残された2009年の登録資料によると、SLCレーシング社はこの個体(’107 026 12 000 626’)と「107 026 12 000 837」からなる、2台の元ワークスカーの歴史的アイデンティティの所有権を獲得したことになる。

ドイツのプライベートコレクションから出品

そして、いったんは分解されたと思われていた「#626」は、メルセデス・ベンツのスペシャリストである同社によって完全にレストア。1979年シーズンおよび1980年シーズンにダイムラー・ベンツ社のラリープログラムで使用されたワークスマシンを再現するかたちで仕立てられた。

2008年5月20日、レストアを完成させた「#626」は、FIA検査員ロバート・レンナー氏によって精査され、「FIAヒストリカル・テクニカル・パスポート」を取得。さらに2016年1月14日には「メルセデス・ベンツ・フランス」のセドリック・ドゥアバン氏による車検を受け、適合書類が作成されている。

この歴史的なメルセデスのラリーカーは、今回ドイツのプライベートコレクションから出品されたもので、ボナムズ・オークション社では、そのオーナーとの協議のもと12万ポンド~20万ポンド(邦貨換算約2320万円〜約3870万円)という、かなり幅の広いエスティメート(推定落札価格)を設定していた。

ところが、4月14日に行われた競売では売り手側が設定したリザーヴ(最低落札価格)には及ばなかったようで、残念ながら流札。現在でも競売前のエスティメートを提示したまま、継続販売となっている。

その歴史的価値からすれば、たとえば「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」のような世界的ビッグイベントに招待されてもおかしくはないレベルの1台。そのあたりを勘案するならば、とくにメルセデスやWRCの熱心な愛好家にとってはなかなかリーズナブルな買い物であるようにも映るだが、いかがなものであろうか……?

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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