ビギナーにも扱えるクラシック・メルセデス
いわゆる「縦目」時代につくられたメルセデス・ベンツのクラシックモデルは、それぞれの時代をリードする先進性により、年式のわりには乗りやすくて安心です。パーツや組みつけの精度の高さゆえ、維持も比較的容易であることから、クラシック入門者からベテランエンスーに至るまで、長らく高い人気を誇るブランドとなってきました。今回は、RMサザビーズ北米本社が2025年2月27-28日にフロリダ州マイアミ近郊の町、コーラルゲーブルズにある歴史的なビルトモア・ホテルを会場として開催された「MIAMI 2024」オークションに出品されていたR113シリーズの「メルセデス・ベンツ280SL」をピックアップ。そのモデル概要とオークション結果をお伝えします。
“縦目”の“パゴダ”、メルセデス・ベンツ280SLとは…?
メルセデス・ベンツの元祖「パゴダ」のエレガントなスタイリングと洒脱な魅力は、西ドイツ(当時)生まれの高級ロードスターとして人気を博した。そして280SLは、愛すべきW113(R113)シリーズ最後のモデルである。
かつての欧米には「プロムナードカー」と呼ばれるジャンルが存在した。純粋なスポーツカーよりも大人しいぶん快適。豪奢なルックスを与えられたオープンモデルたちは、たとえば南仏ニースの「プロムナード・デサングレ」や北米ロサンゼルスの「ロデオドライブ」などのオシャレな通りを、周囲の視線を感じつつゆっくり走らせる……、といったたぐいのパーソナルカーだった。
そんなプロムナードカーの代表格だったのが、メルセデス・ベンツ190SL。そしてその後継車となったのが、1963年3月にデビューした230SLである。
中央がヘコんだパゴダルーフを採用
かつては「W113」、現代では「R113」のコードナンバーで呼ばれる一連のシリーズの端緒となった230SL。そのコンセプトは190SLの正当進化で、モノコック+4輪独立懸架のシャシーは190SL用をリファインしたもの。それに当時ダイムラー・ベンツ社に所属していたフランス人スタイリスト、ポール・ブラクの手による近代的でスタイリッシュな2シーター、ないしは小さなリアシートを設けたオープンボディを組み合わせる。
特筆すべきは、専用ハードトップのルーフが正面から見ると中央の凹んだ独特の形状となることで、ルーフの反り返りが東洋の伽藍建築を思わせることから「パゴダ(Pagoda)」なるニックネームを頂戴した。
パワーユニットは、同時代の上級セダン「220S」のエンジンを2.3Lに拡大。燃料噴射の採用などで150psまでチューンした、直列6気筒SOHCエンジンを搭載する。
230SLはデビュー早々の「スパ〜ソフィア〜リエージュ・ラリー」で、メルセデス遣いとして知られたオイゲン・ベーリンガーの手でみごと総合優勝を遂げるが、基本的にプロムナード的ツアラーという性質は不変だった。
そして1965年には250SLが追加、2年後の1967年には280SLにとって代わられたのも、主因は多数を占め始めた自動変速機に対応するためといわれ、それもプロムナードカーというキャラクターに一致した事実と推察される。


































































































































