限られた予算で戦う軽自動車レースの舞台裏
軽自動車レース「東北660選手権」の耐久レースに参戦する秋田県立大学の自動車部のマシンは、5ドアのスズキHA23S型「アルト」です。限られた予算と経験のなかで工夫を重ね、耐久レースに挑む彼らの姿はまさに挑戦の連続です。秋田県立大学自動車部のマシンを見ていきます。
車両のハンデを覆し3位入賞! 2024年シーズンの快走
開催カテゴリーのなかで唯一となる学生クラスが設定され、チーム員が力を合わせてゴールを目指す東北660の耐久レース。スズキHA36型「アルト」に移行する社会人チームが多いなか、学生チームには依然としてHA23型アルトが人気だ。とはいえ、程度のいい3ドアのMT車は皆無に近い状況で、ミッションをATからMTに載せ替えたり、5ドアのボディを使うなどして、レース車両の製作コストを抑えるべく知恵を働かせている。
そのひとつが秋田県立大学の自動車部。以前の部活の車両であるHA23型アルトから箱替えを行なったが、やはり3ドアのMT車を手に入れるのがなかなか難しく、ボディが重いのを承知で5ドアを使うことになったという。さらに型式はHA23V型ではなくHA23S型。4ナンバーであるVより装備が豪華なSは街乗りには向いているが、軽量化のために何もかも取り払うレース車両では、逆にデメリットになってしまう。
ライバルに比べ、スタートラインの時点で不利ではあったものの、2024年シーズンの最終戦は学生クラスで3位という好成績を残した。改めて説明するまでもなく、耐久レースとは一発の速さより安定してラップを刻むこと、そして車両にトラブルがないことが重要だ。
5ドアでシリーズチャンピオンを狙う
秋田県立大学の自動車部は2年前に10~15名と部員が急増したが、クルマの知識や整備の経験がない人が大半だとか。そのため、普段は部活の車両のメンテナンスを兼ねながらメカの勉強をすることに重点を置いているという。その繰り返しが耐久レースでのトラブル回避に繋がり、かつ部員の技術と経験も底上げされたのだと思われる。
車両に関しては、改造範囲が大きく制限された3クラスなので、足まわりや安全装備といったごく当たり前のチューニングだ。とくに気を遣っているのはオーバーヒート対策で、76.5℃で開弁するローテンプサーモを使用する。ラジエータ本体はノーマルでも十分どころか、春や秋は冷えすぎるためコアの一部を塞ぐほど。
また、万が一に備えて室内にはバイク用の水温計を取り付け、レース中でもドライバーが水温を把握できるようにした。ブレーキ系は以前の部活の車両で使っていたソリオ純正を流用し、長丁場の耐久レースでもフェードしにくいよう工夫している。
過去にもっともトラブルが多かったのはミッション。HA23系のアルトは元々ミッションが弱いといわれているうえ、たくさんの部員が運転し、シフトチェンジのクセも人それぞれだ。そのため寿命が短くなることは避けようがなく、2024年秋の時点でミッションは早くも4機目とのこと。

もっとも、日ごろから整備の経験を重ねているおかげで、プロの手を借りず自分たちで載せ替えができるという。走りも整備も、部員みんなのレベルを上げていく秋田県立大学自動車部。今年の東北660耐久レースでも表彰台、そしてシリーズチャンピオンを5ドアのアルトで狙いたい!













































