装飾類がシックになって大人のミニ クーパーへと成長
今回、ICE版「ミニ クーパーC」のテストドライブのコースとして選んだのは、千葉県内の拙宅と富士スピードウェイを往復する総距離約250km。高速道路が大半を占めつつも、軽めながら一般道のワインディングロードも試すことができた。
クルマに乗りこむ前、視野に飛びこんできたエクステリアは、先代F56型よりも大幅にシンプルなミニマル調。あくまで個人的な感想ながら、ごてごてとした装飾ばかりが目についた先代よりも格段に好ましく感じられる。
インテリアは、全面を粗目の「ハウンドトゥース(千鳥格子)」柄としたテキスタイル風のダッシュボードに、小さめのお盆のようなサイズの有機ELディスプレイ(計器盤)が、まるで立てかけられるように設置されている。レザーストラップをデザインとして取り込んだドアのインナーパネルの意匠も含め、クラシックな英国テイストを織り込んだミニマル感が見受けられる。
「John Cooper Worksスポーツシート」とスパルタンな商品名のわりにはゴージャスなシートに腰を降ろし、STARTボタンを押すと「ツインパワー・ターボ」ガソリンエンジンが静かに始動する。
高速クルーザーとしての資質が先代からさらに高められている
低・中速のトルクは充分以上。市街地走行ではスロットルを軽く踏む程度で、ほとんど3気筒特有の排気音は聞こえてこない。また首都高の入口から本線への合流で一気に加速してもエンジン音が荒げるようなことはなく、このクラスとしては非常に静かなまま定速クルージングに突入する。
日曜日の首都高→東名高速道路は、早朝ながらもボチボチ混みはじめる時刻。制限速度に近いところで流すように走らせていると、スタビリティが非常に高いこと、このクラスとしてはロードノイズが低めに抑えられていることなど、高速クルーザーとしての資質が先代からさらに高められていると実感する。
先代F56クーパーから継承された1.5Lの3気筒+ターボユニットは、スペックシートのうえでは最高出力115kW(156ps)/5000rpm、最大トルク230Nm/1500-4600rpmという、現代としては穏当なチューニングアップである。それでもトルク感は充分で、一般道のワインディングでも気持ちよく走ることができる。
いずれのステージにおいても1280kgという現代車としては軽い車両重量から想像するよりは、遥かにどっしりとした印象。「セグメントBプレミアム」に属するサブコンパクトカーながら、格上の「セグメントC」、たとえば最新世代のフォルクスワーゲン・ゴルフにも匹敵しそうな安定感と上質感を湛えている。
新型F66系は先代F56系の順当な進化型だった
ハンドリングも格段にしっとりとした感があるのだが、そのいっぽうで「フェイバード・トリム」のスポーツステアリングは、リムが筆者の掌には明らかに太すぎて、操舵フィールが実際よりも大味なものと感じられてしまうことだけは、少々残念に感じられた……と、あえて記しておきたい。
ともあれ、内外装デザインのテイストは劇的に変容したものの、新型F66系は先代F56系の順当な進化型……、という第一印象は、この日のテストドライブにより確信に近いものとなっていた。
いわゆるBMWミニの初代にあたるR50系と2代目R56系は、比較的近しいボディサイズとキャラクターを与えられていたことをご記憶のかたも多いだろう。いっぽう、3代目F56系では大幅なサイズアップとキャラ変が図られ、より上質感を打ち出したプレミアムコンパクトへと進化を遂げた。どうやら現代のミニは、メカニズムやクルマ創りの基本形について、2世代ごとに大きく変容させるという方策を採っているようだ。
そして4代目では、BMWミニ開祖のR50系、筆者自身が数年間にわたって愛用したR56系(ただしコンバーチブルなので、厳密にはR57)の時代のような「ゴーカートフィーリング」をことさらに打ち出すのではなく、「大人のミニ クーパー」になったというのは、間違いのないところと思われる。











































































