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フェラーリ348スパイダーが約1100万円で落札!クラシケがなくても高騰する理由とは?

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: iconicauctioneers

もっともリーズナブルな2シーターV8フェラーリの取引価格が大変貌

このほど「The Classic Sale at Wheeler Dealer Live 2025」に出品されたフェラーリ348スパイダーは、スピンオフシリーズ「名車再生!マイクのワールドツアー」シーズン1最終ステージのイタリア篇にて、マイクが最終目標を達成して購入した個体と、ハンドル位置や内装色を除けばほぼ同じモデル。フェラーリとしてはクラシックな選択である「ロッソ・コルサ(Rosso Corsa)」のボディに、「クレーマ(Crema:クリーム色)」のコノリー社製レザー内装を組み合わせた新車時代の仕様が、現在もそのまま維持されている。

また、トランスミッションは「355F1」で世界初のパドル式シーケンシャルMT「F1マティック」が採用される以前は唯一の選択肢であった3ペダルのマニュアル。この時代は前進5速である。

歴代のオーナーは1990年代のフェラーリとしては極めて少ない。総計3人の所有者しか記録されていないためか、ボディは美しく保たれており、インテリアも清潔。異常な摩耗や損傷はないとのことだ。

公式オークションカタログ作成時点での走行距離は約2万8000マイル(約4万4800km)で、現在に至るメンテナンス履歴は、新車当時にフェラーリの正規代理店だった「マラネッロ・コンセッショネアーズ(Maranello Concessionaires)」をはじめ、「グレイポール(Graypaul)」、「ディック・ロヴェット(Dick Lovett)」など、イングランドにおけるフェラーリの主要なディーラーによるものが大部分を占めている。

直近の大規模メンテナンスは、2024年2月23日に英国サリー州エプソムのフェラーリ専門工場「オート・オフィチーナ(Auto Officina)」において、走行距離2万7647マイルの時点で実施。「360」シリーズ以前のV8フェラーリでは必須とされるカムベルトをはじめ、オルタネーターベルトやエアコンベルトなどを交換。また、スパークプラグやワイパーブレード、オイルパイプ、クラッチプレート、イグニッションコイル、イグニッションリード、オイルとフィルター交換、燃料フィルター、エアフィルター、トランスミッションオイル、ブレーキ液などもそれぞれこの時点で新品に交換された。

さらに、プロフェッショナルによるパウダーコーティングを施した純正アロイホイールに、4本の新品ミシュランタイヤを装着するなど、万全のコンディションを誇っている。

人気上昇の兆し?1100万円超で落札された348スパイダー

昨今のコレクターが1980年代と1990年代のヤングタイマー・クラシックに注目するなか、348は再び人気を博しているという。それゆえか、アイコニック・オークショネア社では今回の出品にあたり、5万5000ポンド〜6万5000ポンド(邦貨換算約1090万円〜1290万円)という、以前の348スパイダーの相場を大きく上まわるエスティメート(推定落札価格)を設定した。

そして、ビスター・モーションの特設会場で行われた競売では、ギャラリーに見守られるなかビッド(入札)が順調に伸び、終わってみればエスティメート上限を超える5万6250英ポンド。現在のレートで日本円に換算すると約1100万円に相当する、かなりのハンマープライスで落札に至ったのだ。

あくまで推測ながら、生産から20年以上を経たフェラーリが対象となり、国際マーケットでの評価を大きく底上げする「フェラーリ・クラシケ」の認定をもしも受けているならば、当然のごとく公式オークションカタログにも堂々と記されるはず。それが存在しないのであれば、現時点でクラシケ認定は受けていないとみるのが妥当である。

にもかかわらず、これまで「もっとも安価な2座席V8フェラーリ」などと称されてきた348スパイダー、しかもクラシケ認定なしの個体であってもこれだけのハンマープライスが獲得できるというのは、このモデル全体の相場価格が上昇している……? と考えるのが妥当かと思われたのである。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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