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人気高のフェラーリ「328GTS」が“相場割れ”?RMサザビーズの落札結果を読み解く

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2025 Courtesy of RM Sotheby's

十分なメンテナンスを施され大切にされてきた個体

RMサザビーズ「Cliveden House 2025」オークションに出品されたフェラーリ328GTSは、マラネッロ本社工場から送り出されたときから「ロッソ・コルサ(Rosso Corsa)」のボディ、「クレーマ(Crema:クリーム色)」の英国コノリー製レザーインテリア、レッドのカーペットという、現在と同じカラーコンビネーション。フェラーリ最古の正規ディーラーのひとつである名門「マラネッロ・コンセッショネアーズ」を介して新車として英国に輸入された。

スコットランドの首都エディンバラの自動車ディーラー「グレン・ヘンダーソン・モーターズ(Glen Henderson Motors)」社に納入され、1988年3月2日にエディンバラ近郊の「ダイヤル・オフィス・ホールディングス(Dial Office Holdings)」社に勤務するアレクサンダー・マクドナルドなる人物が、最初のオーナーとしてこの328GTSを受け取る。

このフェラーリは、1987年のクリスマスイブに受け付けた注文に応じてマクドナルド氏に納入され、当時の英国仕様ではオプションだったエアコンディショナーと、エンジンフード上のエアロフォイル型スポイラーが装備されていた。

ファーストオーナーのマクドナルド氏は5年間にわたって328GTSを所有し、その後は英国を拠点とする8人のオーナーが引き継ぐことになる。そして今回のオークション出品者でもある現オーナーは、2015年7月にこの328GTS を購入した。

現オーナーの所有のもと、添付されたドキュメントファイルでも閲覧できる請求書で確認できるメンテナンスが行われており、2021年5月には「QVロンドン」社によって、このV8エンジンでは必須となるタイミングベルトのメンテナンスと、通常同時に実施されるウォーターポンプの交換が行われた。

驚きの落札結果と日本市場における相場の格差

また、同じく車両に添付される英国「MoT登録証明書」は、現オーナーの管理下ではこの328GTSが控えめに使用されていたことを示している。2016年の検査記録におけるオドメーター表示が6万8072マイル(約10万8915km)だったが、それから9年を経た2025年、オークションカタログ作成時点では6万8936マイル(約11万300km)と、ほとんど変わっていないのだ。

さらに、フェラーリS.p.A.との間に交わしたオーダー書類やドキュメント類、純正マニュアル、および純正のレザー製ツールロールも付属して出品されるこの328 GTSは、マッチングナンバーのエンジンを現在でもなお保持していることも、特筆すべきトピックであろう。

RMサザビーズ欧州本社では

「フェラーリの象徴的なカラーリングを特徴とするこのクルマは、同ブランドの1980年代のスタイリッシュな製品ラインナップのファンに必ずや魅力的に映るでしょう」

と魅力をアピールするいっぽうで、5万ポンド~6万ポンド(邦貨換算約1045万円〜約1254万円)というここ数年の国際マーケットにおける328GTSの相場価格に準拠したと思われるエスティメート(推定落札価格)を設定した。

ところが、実際に競売が始まってみると予想外にビッド(入札)が伸びなかったようで、終わってみればエスティメート下限を割り込む4万8300英ポンド。すなわち、現在のレートで日本円に換算すると約960万円という、売り手側にとっては不本意であろう価格で落札されることになったのだ。

とはいえ、日本国内市場におけるフェラーリ328GTSが1000万円台後半から2000万円あたりをボリュームゾーンとしている現況を鑑みれば、今回のハンマープライスがいわゆる「相場価格」とは言いがたい。少なくともこのオークションについては、落札者側にとってみればリーズナブルな買い物の場となった……ということなのであろう。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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