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「世界限定599台」フェラーリ599 GTOの華やかな歴史と意外なる市場反応

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: Bonhams|Cars

フェラーリが新車時からクラシケ認定していた

フェラーリ599 GTOの生産台数は599台に限定され、当時のフェラーリにとってもっとも重要な優良カスタマー向けにのみ販売された。今回「THE BONMONT SALE 2025」オークションに出品されたシャシーNo.「174943」は、2010年10月にローザンヌの「ガレージ・ゼニス(Garage Zenith)」社を介して、スイス連邦に新車として納車された1台である。オーダー時に作成された数多くの魅力的なメーカーオプションのリストは、車両販売時に添付されるファイルに保管されている。

この599 GTOには2021年1月18日、走行距離2万7605kmの時点でフェラーリ代理店「モデナ・カーズ(Modena Cars)」によって押印されたオリジナルのサービスブックレット、同社発行の2021年サービスインボイス、そして重要な「フェラーリ・クラシケ レッドブック」も添付されている。いわゆる「クラシケ」世代でもないのにレッドブックが用意されるのは、この種の限定フェラーリでは、新車の段階ですでに全車クラシケ認定されているからである。

コレクターズアイテムとなるのは必須だがマーケットの評価と売り手の思惑が乖離

フェラーリは599 GTOで稀有なプレゼンスを発揮し、レースコースでも一般道でも同様に興奮をもたらす、真の多目的スーパーカーを生み出したといえよう。この現代のアイコンがコレクターズアイテムとなる未来のクラシックとなることは疑いようのないところで、英国の自動車専門誌「オートカー(AUTOCAR)」が誌面で述べた

「これはフェラーリにとって真のランドマークカーであり、GTOファミリーへの正統な追加であることは疑いようがない」

という結論はいささか大仰ながら、その内容自体に異議を唱える者は少ないだろう。

いっぽうボナムズ社ではこのフェラーリ599 GTOをオークションに出品させるにあたって

「この希少な限定版フェラーリの、しかもほとんど走行していない個体を入手する絶好の機会」

とアピールするとともに、80万スイスフラン〜90万スイスフラン(邦貨換算約1億4800万円〜約1億6700万円)というエスティメート(推定落札価格)を設定していた。

ところが6月29日に行われた競売では思いのほかビッド(入札)が進まなかったようで、競売締め切りの時点で出品者とボナムズ側の協議によって決定されたリザーヴ(最低落札価格)に届くことなく「No Sale(流札)」。現在でもエスティメートと同じ張り出し価格のまま、ボナムズ社営業部門によって継続販売とされている。

じつは599 GTOは、国際的な高級車マーケットでもしばしば見受けられるモデルなのだが、2024年あたりから、どうもオークションなどでも落札に至らないケースが続いているようにも映る。あくまで私見ながら、マーケットの評価は売り手側の見立てよりも、若干冷めつつあるかにも感じられるのだ。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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