41年前に製作された幻のコンセプトカーがまさかの未落札だった理由

クラシックカーの自動車保険の分野では世界最大手である一方、現況の車両相場価格を閲覧できるサービスでも有名な「ハガティ（Hagerty）」傘下のオークションハウス、「ブロードアロー・オークションズ」社。同社が毎年8月に北米カリフォルニア州モントレーにて開催するフラッグシップオークション「Monterey Jet Center」の2025年版が、8月12-13日に開催されました。ビジネスジェット機用の空港とその格納庫を利用して開催されたオークションには、英ロータス＆伊イタルデザイン－ジウジアーロの共作として1984年に製作されたコンセプトカーのロータス「エトナ」の姿がありました。

英国製スーパーカーの先駆者となるはずだったロータスエトナ

伝説のスーパースポーツであるマクラーレン「F1」やジャガー「XJ220」に到達するよりもはるか以前に、ロータス「エトナ」はミッドシップレイアウトを採用するイギリス初のスーパーカーの先駆者という役割を果たすはずであった。

エトナ コンセプトは1984年の英国インターナショナルモーターショー（通称バーミンガムショー）にてショーデビュー。イタルデザイン社の創業者にしてチーフスタイリストである巨匠、ジョルジェット・ジウジアーロが手掛けたウェッジシェイプの未来的なデザインと、スタイリッシュなドライバーコンシャスなコックピットでモーターショーに集った来場者たちを魅了することになる。

シンプルにいってしまえば、エトナは同時代の「エスプリ」を踏み台としたコンセプトカーである。しかし、ロータスの量産スポーツカーにおける未来のビジョンを体現した、唯一無二のモデルだった。

エトナは、トニー・ラッド技師の設計によって335bhp（340ps）のパワーと40.8kgmのトルクを発生する、新開発の4L V8エンジンに5速マニュアルトランスミッションを組み合わせた。理論上では0-60mph（約97km/h）を4.3秒で加速し、最高速度は約180mph（約290km/h）を達成できると想定されていた（当時のエスプリは2〜2.1Lでスーパーカーというほどのパワーは出していなかった）。

また量産されたあかつきには、トラクションコントロールやアンチロックブレーキ、アクティブノイズキャンセリング技術、そしてロータスの F1 レース参戦からされたアクティブサスペンションシステムなど、当時としては先鋭的なテクノロジーが投入される予定だった。

ところが、この時代における事実上の親会社であったGMの意向で、残念ながらロータスエトナは量産化には至らず、このワンオフのコンセプトカーは十数年にもわたって、ヘセルにあるロータスの工場に保管されることになる。