ニュルが認める日本人ジェントルドライバーの本業はお坊さん
ドイツ在住のモータージャーナリスト・池ノ内みどりさんが、毎年取材に訪れるニュルブルクリンク24時間レースには、世界のトップパイロット(ドライバー)が集まります。そのパイロットのなかには、別の職業を持ちながらアマチュアドライバーとして参戦する、ジェントルマンドライバーも数多くいます。ニュルで活躍するジェントルマンドライバーにも日本から14年間も参戦を続けているベテランパイロットがいます。本業はお坊さんで、チューニングショップも経営する二足の草鞋を履く異色のキャリアをお持ちです。
元峠の走り屋から堅実にキャリアを重ねニュルに参戦
ニュルブルクリンク24時間レースへは日本勢として、スバルSTIやKONDOレーシング、トヨタGazooレーシングといったワークス参戦・プロ参戦をしているチームやドライバー以外にも、ニュル好きが高じて自費参戦をされているジェントルマンドライバーもいらっしゃいます。ドイツ国内やヨーロッパ各国からはもちろんのこと、アメリカやアジアなど、さまざまな国からジェントルマンドライバーがその腕を競います。
ニュル24時間レースへは、日本からも何名かのジェントルマンドライバーが参戦されていますが、そのおひとり小西隆詔さんは、とくに異色の経歴の持ち主です。
兵庫県在住の小西選手は『スティルウェイ』というチューニングやレースサポートのショップを経営されている一方で、実家のお寺のご住職、いわゆる僧侶として仏門の世界で檀家方々のために日々奔走されているのです。
若かりしころはサーキットではなく峠や山道を走りまくり、お金を掛けずにクルマ好きの青年だったとか。お坊さまという職業柄、お寺の行事などでレースのフルシーズン参戦は難しかったものの、スポットで日本の地方選やクラブマンレース、岡山チャレンジカップやN1耐久シリーズなどに参戦してこられました。
本格的なモータースポーツの世界へ飛び込んでみようとニュルブルクリンクへの挑戦を決心し、2011年のニュルブルクリンク耐久シリーズを皮切りにスポット参戦を重ねて、すでに14年も関わり続ける生粋のニュル好き。後輩ドライバーのみなさんにもニュルやドイツ、ヨーロッパの魅力を伝え、直接体感して貰おうと年に1度はツアーを組んでいらっしゃるそうです。

昼はお教を唱え夜は積車で朝駆けサーキット通い
小西選手をにとってニュルとは?
「出会いと経験でしょうか。凄く危険なところを走っているときに感じるのですが、ここニュルを訪れると生きているという実感が湧いてくるのです」と、僧侶という職業柄、その言葉はなんだか哲学的にも思えます。
ニュルに挑戦する度に背中を押してくれる人がいて、待っていてくれる仲間がいることで、また翌年にはこの地を訪れてしまうという小西選手。マネージャーとして通訳としていつも側で支えているのは、実家同士がご近所というイギリス在住のドライビングインストラクターの中納徹さん。小西さんとはもう10数年来の仲良しコンビです。
日本では僧侶という職業柄、レースへ参加することで偏見や好奇の目にさらされ、不謹慎だという意見も向けられて傷つくこともあるそうです。しかし、ここニュルでは国籍も性別も職業も関係なく、ひとりのドライバーとして迎え入れて貰えることも、心を穏やかにさせてくれる要素のひとつかも知れませんね。
モータースポーツ=お金持ちの道楽と誤解される事も多いと思いますが、小西選手のモータースポーツの活動資金は、経営するショップからの利益やスポンサーさんからの資金です。スティルウェイのレースサポート業務の際には、僧侶としてのお仕事が終わってから、深夜にトラックのハンドルを握ってレーシングカーを自走で運搬する等、ハードな日々をお過ごしです。
今年はCUP3 PROクラスのポルシェ718 ケイマン GT4 クラブスポーツで参戦されていた小西選手の今後のニュルでの目標ですが、「体が動くうちは頑張って挑戦し続けたいですね。自分で速く走れるようになったと満足するのではなく、私を長らく応援してくださっている方々から『速くなったね』と認めていただけるようにしたいと思います」と。
そして「いつかはSP9クラス(FIA GT3マシンクラス)へ挑戦したいです!」とも。きっとその日はそう遠くないのではという気がします。期待して今後の活躍を応援したいと思います。





















































