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人生を変えた“わずか28台の展示”のポルシェ博物館!ジャーナリストとしての出発点となったドイツ巡礼【クルマ昔噺】

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TEXT: 中村孝仁(NAKAMURA Takahito)  PHOTO: 中村孝仁(NAKAMURA Takahito)

  • 1934年式ヴァンダラーW22
  • 1947年式ポルシェ タイプ360チシタリア
  • 1948年式ポルシェ 356プロトタイプ
  • 1964年式ポルシェ 904GTS
  • 1967年式ポルシェ 910ベルクシュパイダー
  • 1968年式ポルシェ 909ベルクシュパイダー
  • 1970年式ポルシェ 917K
  • 1971年式ポルシェ 917ランクヘック
  • 博物館は、ポルシェ通り42番地にあった
  • ポルシェの建物全体が古ぼけたものであったが、その中の博物館は、顧客への車両デリバリーや広報センター、工場見学者の待合室などと並んで設置されていた
  • 1977年の館内の様子

自動車ジャーナリストの原点となったポルシェ博物館との出会い

モータージャーナリストの中村孝仁氏の経験談を今に伝える連載。自動車ジャーナリストとしてのキャリアを西ドイツでスタートさせた筆者が、1970年代に初めて訪れたポルシェ博物館でした。そこには創業者フェルディナント・ポルシェ博士の思想と、ブランドの原点が凝縮されていました。あの日の体験こそ、筆者が自動車を伝える仕事を志したスタート地点だったのです。

自動車博物館の大家になるつもりで各地をまわることに

大学を卒業後すぐに、当時の西ドイツへ留学した。当初の目的は、シュトゥットガルト工科大学への入学を目指したが、当時は聴講生を受け付けておらず断念。その後、将来を見据えて自動車ジャーナリストを志すことにした。

コネもなく、何をすべきか見当がつかない状況であったが、当時オペルでデザイナーをしていた児玉英雄さんがいろいろとアドバイスをくれた。親切にも日本の自動車メディア関係者を紹介してくれた上、ある意味で方向性まで示唆してくれた。曰く

「生き馬の目を抜くようなジャーナリストにはならないように」

という言葉をいただいた。要するに、トップ屋ではなく、じっくりと腰を据えた仕事をせよという示唆である。そこで、せっかくヨーロッパにいるのだから、自動車博物館の大家になろうと決心した。そこから各地の自動車博物館巡りを開始した。

西ドイツに到着して初めて滞在したのはシュトゥットガルトである。ここはまさに自動車の聖地だ。シュトゥットガルト中央駅の駅舎の屋根には、当時あのスリーポインテッドスターが輝いていた。今もそうなのだろうか。ここにはポルシェもある。ポルシェの博物館を探すため、あちこちを歩き回ったことを記憶している。

当時ポルシェは、年間せいぜい3万台から4万台程度を生産する弱小スポーツカーメーカーに過ぎなかったが、その知名度と実力は今と変わらず、影響力も大きかった。しかも筆者が滞在していた1970年代中盤から後半は、ル・マンをはじめとした各地のレースで圧倒的な力を誇示した時代である。まさにこの頃からポルシェの躍進が始まったと言っても過言ではない。

やっと見つけた当時ポルシェの博物館は、収蔵車がわずか28台のちっぽけなものだった。今のモダンで立派な博物館からは、想像もできないほど小規模であった。博物館が正式にオープンしたのは1976年5月である。筆者が最初に訪れたのは1977年のことで、写真はその時と、それ以降に取材で訪れた時に撮影したものだ。

博物館は、ポルシェ通り42番地にあった。ポルシェの建物全体が古ぼけたものであったが、その中の博物館は、顧客への車両デリバリーや広報センター、工場見学者の待合室などと並んで設置されていた。多少の新しさを感じるものの、ウナギの寝床のように奥へ長い室内は、左右にクルマが並び、中央に歩くスペースがある本当に小さな空間だった。

展示されていたのは、そのほとんどが歴戦のポルシェ・レーシングマシンと、創業者フェルディナント・ポルシェ博士が初期に設計したポルシェ以外の車両である。最新モデルや、いわゆるロードバーションのクルマは、初期の356以外ディスプレイされていなかった。

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