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WRCレプリカ仕様のランチア「デルタHF 16V」が約411万円で落札!ワンオーナー車が低価格で落札された理由とは

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: Bonhams

完全ワンオーナーの16Vがリザーブなしで出品

ボナムズのオークションに出品されたランチア デルタHFインテグラーレ16Vは、シャシーNo. ZLA831AB000491725を持つ個体だ。デビューイヤーの1989年内に生産された、16Vとしては比較的初期の個体である。モータースポーツの伝統に敬意を表し、「マルティーニ(Martini)」にインスピレーションを得たカラーリングが施されており、WRCレプリカ仕様となっている。

ボナムズ社の公式WEBカタログ作成時点で、オドメーターに刻まれていた走行距離は7万7218kmである。年式を考慮すれば、かなり少ない走行距離だ。新車時から現在に至るまで唯一のオーナーである今回の出品者は

「2024年8月に大規模なメンテナンスサービスを受け、広範囲で新品パーツが交換された」

と申告している。

公式カタログでは

「ラリー史におけるマイルストーンであると同時に、『ラリーカーのカラーリングで乗り出せる』というドライバーの夢でもあります。なかでもこの保存状態の良好な、完全ワンオーナーのランチアは、次のオーナーがすぐに楽しめる状態になっています」

とPRされた。

さらに、4万ポンド~5万ポンド(邦貨換算約800万円〜1000万円)というエスティメート(推定落札価格)が設定された。「エヴォ」以外のデルタHFとしては、かなり強気な価格設定であったといえる。このロットは「Offered Without Reserve(最低落札価格なし)」で競売を行うこととされた。

予想価格を大幅に下まわった金額で落札

この「リザーヴなし」という出品スタイルは、入札価格の多寡を問わず確実に落札されるため、競売会場の購買意欲が盛り上がり、エスティメートを超える勢いで入札が進むメリットがある。しかし、売り主の意にそぐわない安値であっても落札されてしまうという、出品者サイドからすれば不可避的なデメリットも伴う。

オークション当日、グッドウッドの特設会場で開催された競売では、リザーヴなしのデメリットが露呈するかたちとなった。落札価格は2万700英ポンド、現在の為替レートで日本円に換算すれば約411万円というリーズナブルな価格に留まった。

たしかに外観は正しい16V仕様のマルティーニ・リバリーに仕立てられているが、好みが分かれる要素ともなり得る。メカニカルコンディションには自信があったようだが、エンジンのカムカバーなどのシュリンクペイントは盛大に剥げている。

シートも、アルカンターラ部分に毛玉やほつれは見られないものの、「ミッソーニ(Missoni)」社製の座面とシートバックには色落ちが見られるなど、年式相応の「ヤレ」があるのも事実である。上記の点を考慮すれば、このハンマープライスは至極適切なものであったと判断できる。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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