1989年のみ生産された稀少な「2.7L」仕様
今回アイコニック・オークショネアズのNECクラシック・モーターショー・オークションに出品された1989年式の944もまた、一連の944シリーズのなかでは非常に珍しいスペックを持つモデルだ。この年ポルシェは、もっともベーシックな944の搭載エンジンを、新たに2.7Lの排気量を設定した直列4気筒SOHCに変更した。
最高出力165psを発揮するこのエンジンが搭載された944が生産されたのは1989年のみで、ドイツ市場以外にわずかに2730台がデリバリーされたと記録されている。アイコニック・オークショネアズの調べによれば、このなかで2691台はアメリカ、カナダ、そして日本へと輸出されている。
「C16」のカントリー・コードを持つイギリス仕様は10数台がデリバリーされたにすぎず、さらに出品車のように5速MTを組み合わせるモデルは希少だ。その意味でもこのオークションは、イギリスのポルシェ・ファンにとっては見逃せないものになった。
しっかりと整備された944のオークション結末
1989年1月1日に、イングランドのエクスターにあるクーパー社からデリバリーされた記録が残る出品車は、当時のままの美しいベルベットレッドのボディと、バーガンディのインテリアを保っていた。ちなみにそのボディは以前の所有者によって、約1万3000ポンド(約270万円)の費用をかけて、すべてのガラスを外した再塗装が行われたもので、イギリスのポルシェ・クラブもそれを「非常に良好な状態で、かつ完全修復済み」と評価している。
加えてヘッドランプウォッシャーやホワイトのフロントフォグランプ、アラーム・システム、ABSといった、当時オプション設定されていたアイテムが装備されていることや、サンルーフを収納するためのポルシェ純正のバッグまでもが残されているのも見逃せないポイントだ。
現在までに8万409マイル(約12万8654km)を走行した1989年式のポルシェ944。2023年にはカムベルトの交換を含む整備も行っており、MOT(イギリスにおける車検)も2026年7月14日まで残っていた。
しかし、残念ながら今回のオークションでは、入札は最低落札価格に達することはなかったようだ。参考までにアイコニック・オークショネアズが事前に発表していた予想落札価格は2万~2万5000ポンド(邦貨換算約416万円~520万円)だった。










































































