極初期1976年左ハン/5速MT/シャシーNo.38
イタリアからオーストリアに渡りフルレストア
マセラティ クラブUKがイタリア本社のファクトリーデータから調べたところによると、キャラミは4.2L版が124台、4.9L版が74台の、合わせて198台が生産されたとのことである。
ボナムズ「PARIS SALE 2026」オークションに出品されたキャラミ(シャーシナンバー「#38」/ボディナンバー「#16」)は、デビューイヤーの1976年式ということで、この時期には唯一の選択肢であった4.2L版である。そしてキャラミとしては通算19台目にあたる左ハンドル仕様で、トランスミッションは5速MTだった。
新車として納車されたファーストオーナーについての記録は残されていないが、デリバリー先はイタリア国内だった。2代目の所有者はオーストリア インスブルックのハイモ シュトラウハル、その後は同じくオーストリアのエーベン アム アーヘンゼーに住むフリッツ コステンツァーが引き継いだ。
コステンツァーの所有のもとでは、オーストリア シュトラスのスペシャリストであるクリストフ ダポントにより、3年間(2012〜2015年)にわたってレストアが行われた。ボナムズのキュレーション担当者が2013年にシュトラスを訪ね、修復作業中のこの車両を視察した際には、ボディパネルはベアメタル状態まで完全に分解されていたという。
外装のオリジナルカラーは、ランボルギーニなどにも時おり見られるモスグリーンのメタリック「ルーチ デル ボスコ」であった可能性が高いそうだが、内装のオリジナルカラーについては不明とのことだ。現在はブラックメタリック塗装にクレーマ(クリーム色)のモケット張りインテリアの組み合わせで設えられている。
マセラティ冬の時代に咲いた硬派クーペの大輪に
リーズナブルに過ぎる価格で悲しく響くビット音
今回のオークション出品に際して、ボナムズは5万ユーロ〜7万ユーロ(邦貨換算約910万円〜1274万円)という自信ありげなエスティメート(推定落札価格)を設定した。その上で「Offered Without Reserve」、つまり最低落札価格は設定しなかった。
このリザーブなしという出品スタイルは金額の多寡を問わず確実に落札されることから、とくに人気モデルではオークション会場の雰囲気が盛り上がり、ビッド(入札)が進むことも期待できる。ただしそのいっぽうで、たとえビッドが出品者の希望に達するまで伸びなくても、落札されてしまうという落とし穴も二律背反的に持ち合わせる。
そして迎えた競売では、リザーブなしのリスクが発露してしまったかのように、エスティメート下限には今一歩届かない4万8300ユーロ。現在のレートで日本円に換算すれば約879万円という落札価格で、競売人のハンマーが鳴らされることになったのだ。
マセラティ キャラミは総計でも200台足らずしか生産されていないせいか、現在の国際マーケットで売り物が出る機会も少ないようだが、さらにレアな「キャラミ4900」ならば、1万〜2万ユーロ増しで取り引きされる事例が多い模様である。
デ・トマソ時代の混沌とした「マセラティ冬の時代」に咲いた、最後の古き良き大排気量V8のグランツーリングクーペの大輪にしては、少々リーズナブルに過ぎるビットだったように思えて仕方ない。
※為替レートは1ユーロ=182円(2026年3月9日時点)で換算

























































