シャプロン家が乗り継いできた由緒正しき個体
あらゆる箇所を妥協なく包括的にレストア済み
今回ボナムズ「PARIS SALE 2026」オークションに出品された1966年式シトロエン DS21「マジェスティ」ベルリーヌは、かつてパリに工房を構えていた伝説のカロジエ、アンリ シャプロンによって丹念に手作りされた約27台のうちの1台である。
1966年7月、シモーヌ フルニエが娘婿であるアンリ シャプロンに直接オーダーした。納車は1966年11月10日に行われ、同年11月15日にパリで初登録(ナンバープレート「6535 TM 75」)されたのちはシャプロン家が長年所有してきたという、由緒ある1台だ。
独特のデカダン的様式美を漂わせるボディは、シックで優雅なダークブルーでペイントされている。ベージュ革とファブリックのコンビによるスタイリッシュな内装を組み合わせている。また、リムジンのように運転席とリアコンパートメントを隔てる「ディヴィジョン(仕切り)」は、マジェスティのなかでも希少かつ、とくに魅力的な装備である。
新車としての納車からわずか4名のオーナー歴と、ノエル シャプロン発行の真正証明書を伴うこの個体はフランス国内登録済みで、豊富なドキュメント類も完備している。また、これまで莫大な費用と妥協なき細部へのこだわりをもって実施された包括的なレストア作業を経ている。主要機械部品はすべて、最高レベルの信頼性を確保するためオーバーホール済みと報告されていた。
仏国自動車文化は移動ではなく芸術という主張
世界で最も快適で優雅なリムジンの価値とは…
ボナムズ オークション社の公式オークションカタログでは、
「この唯一無二の車両はエクスクルーシブ性に加えデザイン面のヘリテージ、歴史的意義が比類なく融合した存在であり、フランス自動車芸術を収集する鑑識眼あるコレクターにとって稀なる機会となる」
と高らかに謳いあげていた。当然のように12万5000ユーロから15万ユーロ(邦貨換算約2290万円〜邦貨換算約2745万円)という、スタンダードなDSベルリーヌの相場価格の3〜4倍にも匹敵しそうなエスティメート(推定落札価格)が設定されていた。
そして迎えた1月30日のオークション当日。パリのブローニュの森の「バガテル城」に隣接する、世界でもっとも権威ある歴史的なポロクラブ「ポロ ド パリ」にて行われた競売では、売り手サイドが期待したほどにはビッド(入札)が進まなかったようだ。締めきりに至っても現オーナー側が設定した最低落札価格には届かず、残念ながら流札に終わってしまったのである。現在では上記のエスティメートを保持したまま、ボナムズ オークション営業部門による個別販売が継続されているようだ。
「フランスの自動車文化は、単なる移動手段ではなく芸術である」という思想を引き継いだのが、まさにシャプロンだった。シトロエンに芸術の息吹を吹き込むシャプロンという職人が、シトロエンの魔法のようなハイドロニューマチック・サスペンションと自らの手によるボディを組み合わせることで、「世界で最も快適で優雅なリムジン」を存続させていたのだ。この時代背景と芸術性、さらに希少性を併せ持つ「マジェスティ」が流札となったのは、なんとも残念に思えてならない。
※為替レートは1ユーロ=183円(2026年3月10日時点)で換算
















































































