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世界的カリスマ人気は健在! 2.5億円に迫る落札「70年を経た世界最速メルセデス ベンツ300 SL」の個体価値

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: Bonhams  FACT CHECK: 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)

希少オプションのハイギヤードファイナル装備! 速度計目盛180マイルと特別設定が価値を高める

先ごろボナムズ「PARIS SALE 2026」オークションに出品されたメルセデス ベンツ 300 SLガルウィングは、新車時からオリジナルのシャーシ、ボディ、エンジンを保持した貴重なマッチングナンバー車だ。

1955年8月9日にジンデルフィンゲン工場(ドイツ南部シュトゥットガルト近郊に位置する、メルセデス ベンツで最も歴史があり、かつ最も重要な基幹工場のひとつ。単なる製造拠点にとどまらず、研究開発(R&D)やデザイン部門も併設される重要拠点)から出荷され、同年8月25日にメルセデス ベンツ ディストリビューターズ社を介してニューヨーク市内で新車として納車されたことが、エリック・ル・モワン(メルセデス・ベンツの最も著名で権威ある歴史研究家)の著述による「300 SLレジスター(登録簿)」に記録されている。

生産当初はシルバーグレーメタリック塗装にブルーのレザレット(ビニールレザー)とタータンチェックの布張りで仕上げられていたが、現在では艶やかなソリッドブラックに再塗装され、内装も赤い本革レザーに張り替えられている。

特筆すべきは、この車両が300 SLとしても極めて稀なオプションである、ハイギヤードのファイナルレシオ(1 : 3.42)を装備している点だろう。これは初代オーナーが注文時に選択したものだそうだが、このもっとも速いファイナルにより260km/h超の最高速度が可能となり、速度計の目盛が180mphまで設定されている理由となる。300 SLガルウィングの標準ファイナルギヤ比は1:3.64で、速度計の目盛りは160mphまでである。

世界的に著名な整備工場で徹底した修復と太鼓判 オークション予測通り驚愕2億4530万円で落札!

米国で4人の所有者を経たのちに1980年にイギリスへと渡り、1980年代末には大規模な修復を受けることになった。その後は英国内で2人の所有者を経て、2011年にパリ在住のコレクターであるフランス人の現オーナーの手に渡った。

そして現オーナーはパリ郊外スタンのMB クラシック社に移送し、フルオーバーホールを実施する。この時には燃料噴射ポンプのオーバーホールに新品インジェクターの装着、全ホース類の交換、ブレーキのフルオーバーホール、ラジエーターとオイルクーラーのオーバーホール、スターターモーターとオルタネーターのオーバーホール、そして車両全般の点検なども行われ、関連する請求書の総額は6万ユーロを超え、記録として保管されている。

またこのガルウィングは上記のMB クラシック、および同じくパリ近郊のヴィルヌーヴ ス ダマルタン(Villeneuve-sous-Dammartin)にある「GFB Classic-Auto」(単なる整備工場ではなく、メルセデス・ベンツ300SLをはじめとする希少なクラシックカーの管理・鑑定・アーカイブをすることで世界的に有名)にて定期的に整備を受けているという。直近のテストドライブではエンジンが即座に始動し、スムースに作動。最も手強い難敵として知られる直噴インジェクションの調整もしっかり行われているようで、エンジン回転の上昇も問題なく、低速・高速域とも良好な性能を発揮した。さらに変速も滑らかで、ブレーキも正常に作動したと報告されている。

また、専門家による査定報告書も保管されており、車両は「全体的に極めて良好な走行状態」であり、「車体下部とシャーシの目視可能な部分は非常に良好な状態で、事故損傷や金属を貫通する錆の痕跡は見られない」と記載されていたとのこと。

くわえて、前述したサービスやメインテナンスに関する各種請求書に鑑定報告書、現在も有効なカルト グリーズ(フランス国内の車検履歴書)および最新のコントロール テクニーク(車検)も車両に付属しているとのことであった。

さらには、トランクルームとキャビン後半の形状に合わせた専用純正ラゲッジセットまで備えたこの300 SLガルウィングについて、ボナムズ オークション社の公式オークションカタログでは「20世紀でもっとも憧れられるクラシックカーの傑作のひとつ」と規定しつつ、120万ユーロ〜150万ユーロ(邦貨換算約2億1960万円〜約2億7450万円)という自信たっぷりのエスティメート(推定落札価格)が設定されていた。

そして迎えた1月30日のオークション当日。パリのブローニュの森のバガテル城に隣接する、世界でもっとも権威と歴史のあるポロクラブのひとつ「ポロ ド パリ」にて行われた競売では、エスティメートで見込んだとおりの129万9500ユーロ。現在のレートで日本円に換算すればじつに約2億3780万円という、300 SLガルウィングとしてもなかなかの高額で、壇上に立つ競売人のハンマーが鳴らされることになったのだ。

第二次世界大戦終戦後10年、日本と同じ敗戦国ドイツですでにこの高性能車「300SL」が生み出されている。実に自動車文化の差を感じさせる象徴とも言えるクルマだ。しかもハイギヤードのファイナルデフのオプションを持つこの個体の最高速260km/ hは、当時世界最速性能だったことを加筆しておく。

為替レートは1ユーロ=183円(20263月16日時点)で換算

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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  • 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)
  • 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)
  • 1960 年生まれ 大学卒業後ベストカーガイド編集部勤務。1990年オートスポーツ誌に転職、1992年F1速報誌(アズエフ)編集長。1995年月刊ビデオマガジン編集部に転職、1996年ベストモータリング編集長(のち局長兼務)。2005年ネコパブリッシング・イベント本部長/4輪編集局長兼務。2015年交通タイムス社に転籍、2020年より現職(総編集局長)自動車の分野に問わずオールマイティだが、特に旧いモータースポーツとクラシックカーに造詣が深い。愛車は1969年DATSUN Fairlady SRL311/YAMAHA RD250ほか

 

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