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ポルシェ「959」を「50台のみ」最新レストモッド技術で800馬力に生まれ変える米国カネパの執念と実力!

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: Courtesy of Broad Arrow  FACT CHECK: 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)

伝説のポルシェ959をカネパが完全刷新し、現代の800馬力ハイパーカーへと昇華させた「959SC」

通常、生産台数が極端に少ない歴史的クラシックカーに手を入れる「レストモッド」は、オリジナル至上主義のコレクターから強い批判を浴びがちだ。しかし、この959においてカネパだけが例外として許容(むしろ熱狂的に歓迎)されているのには理由がある。彼らこそが北米で959を合法化させた立役者であり、長年のメンテナンスを通じて誰よりも959の弱点を知り尽くしているからだ。

カリフォルニア州スコッツバレーに本拠を置くカネパは、その経験をもとに、ポルシェの卓越した創造物のあらゆる要素を根本から再調整し、一部の領域では完全に再設計するアプローチを開発したのである。

カネパ本社ではもっともオリジナルに近い個体のみを選び、まず車両全体を慎重に分解して、鋼鉄のモノコックボディまで剥き出しにする。この段階ですべてのボディパネルは塗装の下地処理を施されるかたわら、顧客は150色以上におよぶポルシェ純正の「ペイント・トゥ・サンプル」パレットから選択するか、独自のカラーをカスタマイズすることができる。また、キャビンについてもポルシェ純正の数えきれないほどのカラーとステッチオプションから、400時間以上をかけて新しいレザー内装を製作する。

カネパの自社塗装・内装部門が唯一無二の内外装を仕立て上げるいっぽう、ポルシェ 959の整備に20年以上の経験を持つ技術者たちが、4000点を超える個々の機械部品を点検し、再構築あるいはアップグレードを行う。文字どおり何も手をつけない箇所はなく、すべてのボルトやクランプ、フィッティングが分解され、さまざまなコーティングで再メッキされる。

グループBクラスの公認取得を目的に開発され、グループCカーであるポルシェ 956/962のパワートレインを継承した959の空水冷2800cc フラット6+ツインターボエンジンは、もとより工場出荷時の450ps/51.0kgmを大幅に上回る出力を想定して設計されていた。

いっぽう、既存エンジン部品の最適化と新規部品の開発に30年を費やした結果、959SCの水平対向6気筒エンジンは、カネパの「ステージIII」アップグレードにより、800ps超という驚異的パワーと約90kgmのトルクを発生する。最新鋭のボルグワーナー製ターボチャージャーなどが効力を発揮し、獲得したパフォーマンスはまさしく現代的なハイパーカー級。0-97km/h加速は2.5秒、最高速度は約370km/hを超える走行性能を発揮することになったのだ。

5億円超えで成約した究極のレストモッド「959SC」は、959が秘める現代ハイパーカーへの潜在能力

総生産台数は最大でもわずか50台に限定されるという「959SC リイマジンド by カネパ」。ベースとして選定されるのは、あくまでオリジナルな状態を保ち、走行距離の少ないポルシェ 959のみとのことだ。

このほどアメリア・アイランド2026に出品されたシャシーNo.#053は、もともと266台が製造された「959 コンフォート」の1台であり、分解された時点での走行距離は8302kmという理想的な状態にあった。当初は「ポーラーシルバーメタリック」のボディに「ダークグレーメタリック」のレザー内装という仕様だったが、2019年にカネパへ持ち込まれ、4000時間以上の作業を経て2022年に完成。カネパ 959SCとしてのシリアルナンバー「009」が与えられた。

現在、このポルシェは純正色「アイリッシュグリーン」を基調としつつ、微調整を施した塗装を纏っている。室内は特注の「タバコブラウン」レザーと調和したカットパイルベロアカーペットで仕上げられた。

今回の出品にあたり、主催者側は「伝説的なモデルを21世紀へ引き継ぐべく、数十年にわたる研究開発を経て実現した、959プラットフォームの真のポテンシャルを体感できる機会である」とアピール。325万ドル〜375万ドル(邦貨換算約5億1350万〜5億9250万円)という、ここ数年のポルシェ 959の相場感からしても、かなり自信ありげなエスティメート(推定落札価格)を設定した。

ところが3月7日の競売では、オーナー側が指定したリザーブ(最低落札価格)には届かず流札となった。しかし、そのあと「Sold After Auction」、つまりオークション終了後に個別販売で成立したという。

事後販売価格は公表されていないものの、今年の「アメリア・アイランド」セールスにおける落札価格順位では、第10位にランクインする堂々たるプライスだったとのこと。オリジナルを至上とするクラシックカー市場において、この極端なレストモッドモデルがここまでの高評価を得た事実は、ポルシェ 959の奥深さとカネパの執念の勝利と言えるのではないだろうか。

※為替レートは1ドル=158円(2026年4月16日時点)で換算

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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  • 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)
  • 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)
  • 1960 年生まれ 大学卒業後ベストカーガイド編集部勤務。1990年オートスポーツ誌に転職、1992年F1速報誌(アズエフ)編集長。1995年月刊ビデオマガジン編集部に転職、1996年ベストモータリング編集長(のち局長兼務)。2005年ネコパブリッシング・イベント本部長/4輪編集局長兼務。2015年交通タイムス社に転籍、2020年より現職(総編集局長)自動車の分野に問わずオールマイティだが、特に旧いモータースポーツとクラシックカーに造詣が深い。愛車は1969年DATSUN Fairlady SRL311/YAMAHA RD250ほか

 

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