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日産の小さな「R」はジャイアントキラー! 競技専用に生産された日産「マーチR」が羊の皮を被った狼すぎた

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TEXT: 勝村大輔(KATSUMURA Daisuke)  PHOTO: 勝村大輔(KATSUMURA Daisuke)  FACT CHECK: 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)

  • 日産 マーチR:オーナーの板野さんと愛車。「ほとんどの人がこのクルマをわかってくれない」と笑いながら語る
  • 日産 マーチR:ロールケージが組まれたいかにも競技車両らしいインテリア
  • 日産 マーチR:エンジンルームに収まるMA09ERT型930ccツインチャージャーエンジン。上置きのインタークーラーが確認できる
  • 日産 マーチR:リアビュー。ロールケージが車内に確認でき、シンプルな外観に反してただものではない雰囲気を醸し出す
  • 日産 マーチR:運転席には希少なNISMOのバケットシートを装着。助手席は純正シートが残る
  • 日産 マーチR:13インチのヒーローレーシングアルミホイールを装着。タイヤはヨコハマADVAN AD50
  • 日産 マーチR:デッドストックで入手したNISMOラリー用ショックアブソーバ。品番「54302-RS259」のラベルがそのまま残る
  • 日産 マーチR:リア足まわりにはNISMO製ラリー用ショックアブソーバRS259を装着。極上の保存状態が車体下部からも見てとれる
  • 日産 マーチR:ハッチゲートに輝くRエンブレム。競技車両としての素性を唯一主張する
  • 日産 マーチR:側面から見ると、ドアミラーやモールなど不要な装備を省いた軽量化仕様の佇まいが際立つ
  • 日産 マーチR:インタークーラーへ外気を導くボンネット上のエアスクープ。マーチRの外観における唯一の特徴だ
  • 日産 マーチR:すぐにでもラリー競技に参戦出来そうな雰囲気がある
  • 日産 マーチR:シンプルなブラックグリルとCIBIEのNISSAN製フォグランプ。ボンネットにはインタークーラー用エアスクープが備わる

地味な外観に騙されるな! 全日本ラリーで活躍した930ccツインチャージャーの競技専用車

ハチマルミーティングには、数多くの’80年代の車両が集まります。派手な外観のクルマが目立つなか、地味な佇まいのなかにも名車は存在するものです。今回紹介するのは、初代マーチをベースにした日産の競技専用車「マーチR」です。ツインチャージャーエンジンを搭載して全日本ラリー選手権で活躍した、スーパーターボの元祖の素顔に迫ります。

目立たない外観ゆえにスルーされがちな一台

イベント会場で数多くのクルマを見ていて、面白い一台を発見した。見た目は低グレードのマーチなのに、ボンネットにエアスクープが備わっているのだ。リアに回ってみると、ハッチゲートにRの文字を発見。車内にもロールケージが備わっていて、ボディ全体からただ者ではない雰囲気を醸し出している。そこでオーナーの板野さんにこのクルマについて尋ねてみた。

「このクルマはマーチRという競技車両で、1988年式です。競技に出るために必要最小限の装備しか備わっていないので、地味で目立たないんです。以前は後に登場するスーパーターボに乗っていたんですが、このクルマに乗り換えてから、ほとんどの人がこのクルマをわかってくれませんね(笑)」

全日本ラリーやサファリラリーで大活躍した競技専用車にしてカルト的ホットハッチ

マーチは日産が1982年にリリースした2ボックス形状の小型車だ。徹底して軽量化したボディに乾燥重量わずか69kgという軽量コンパクトなエンジンを搭載し、スポーティな走りが楽しめるホットハッチという性格と、当時の10モード燃費20km/Lオーバーという経済性も併せ持っていた。

そんなマーチをベースにした競技車両として登場したのが、ホットモデルのマーチターボを発展させた1988年のマーチRだ。不要な装備を徹底排除した軽量なボディに、低回転はスーパーチャージャーを活用し、高回転域ではターボの圧倒的なパワーを利点としたツインチャージャーエンジンと、クロスレシオ5速マニュアルトランスミッションを搭載。全日本ラリー選手権で大活躍した。後にこのマーチRをベースにした一般向けモデルとして、1989年にマーチスーパーターボがリリースされた。丸穴のラジエータグリルやエアロバンパーなどでホットモデルであることがわかりやすかったこともあり、こちらが日本だけでなく世界的にも有名(海外ではMicra Super Turbo)になってしまい、本家のマーチRは影が薄くなってしまう。

ちなみにエンジンは、通常のマーチと同じ987ccではなく、1.0L超〜1.6L以下の全日本ラリー「Bクラス」での勝利を目標にしていたため過給機係数の1.7を掛けた際に1.6リッター(1581cc)に収まるように930ccにボアダウンしている。このエンジンに上置きのインタークーラーが備わるため、シンプルかつベーシックなブラックバンパーながら、ボンネットにエアスクープが備わるのが外観で唯一の特徴だ。

極上コンディションゆえにラリー競技出場は封印

板野さんは走行10万km以下というボディの状態が非常に良い個体を入手した。運よくデッドストックのNISMOラリー用ショックアブソーバを入手し装着しているほか、今となっては懐かしい13インチのヒーローレーシングアルミホイールも装着している。この手の車両は基本的に競技に使用され、ボディもそれに応じて傷んでいるケースが非常に多いため、これほどキレイな状態の個体は珍しいという。そのためこの状態を維持すべく、今後もラリー競技には出場しないそうだ。

ラリー競技では格上とも言えるテンロククラスのシビックやカローラと互角以上に渡り合い、数々の勝利を挙げてきたマーチR。海外でも1988年のサファリラリーに挑戦し、見事クラス優勝を遂げるなどその実力は世界中にも知れ渡ったほど。32GT-Rが登場する前夜、日産は小さなクラスから着実に「R」の存在意義を世間に広めていたのだ。

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  • 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)
  • 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)
  • 1960 年生まれ 大学卒業後ベストカーガイド編集部勤務。1990年オートスポーツ誌に転職、1992年F1速報誌(アズエフ)編集長。1995年月刊ビデオマガジン編集部に転職、1996年ベストモータリング編集長(のち局長兼務)。2005年ネコパブリッシング・イベント本部長/4輪編集局長兼務。2015年交通タイムス社に転籍、2020年より現職(総編集局長)自動車の分野に問わずオールマイティだが、特に旧いモータースポーツとクラシックカーに造詣が深い。愛車は1969年DATSUN Fairlady SRL311/YAMAHA RD250ほか

 

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