秘密が多いフェラーリの特別なプロトタイプがオークションに登場したワケとは!?
世界中の自動車ファンが熱狂した2013年のジュネーブ・ショーにおいて、ひときわ大きな輝きを放っていたモデルが存在する。フェラーリが誇る特別な限定モデルであるフェラーリ「ラ フェラーリ」である。発表に先立ち、2012年のパリ・サロンでカーボンモノコックを公開していた。さらにフェラーリの市販クルマとしては初となるハイブリッドシステムが採用されることを明らかにしていたものの、実際に499台の限定クルマとして姿を現したときの衝撃は、それまでの特別なモデルと同様か、いやそれ以上に計り知れないものであった。そして一番の疑問は、なぜフェラーリのプロトタイプ車両がオークションに登場したのか、というところではなかろうか。
6台のプロトタイプが製作された開発の裏側を紐解く
「ラ フェラーリ」の開発は、「F150」というプロジェクトコードのもとに進められてきた。机上のスケッチに始まり、綿密な数学的計算のもとに描かれた設計図を作成した。そしてスケールモデルを経て、原寸大のモックアップ(実物大の模型)製作へと進むデザインのプロセスと並行して、世界最先端のエンジニアリングが数多く試みられている。
その過程でフェラーリは6台のプロトタイプを製作したとされる。通常、このようなプロトタイプは役割を終えた後に社外に出回ることはないのだが、今回RMサザビーズが開催したマイアミでのオークションに、この中の貴重な1台が出品された。

開発フェーズが異なる3つのプロトタイプ計6台が存在した
フェラーリがF150プロジェクトのなかで製作した6台のプロトタイプは、開発フェーズに応じて3つのタイプに大別することができる。もっとも初期のプロトタイプはフェラーリ「458イタリア」のボディやシャシーを用いて製作されたもので、これは約6.2リッターのV型12気筒エンジンに、「HY-KERS」と呼ばれるフェラーリ独自のハイブリッドシステムを組み合わせたパワーユニットをテストするために使用された。
その後に製作されたモデルは、専用のシャシーと市販モデルに酷似したデザインのボディを備えていたものの、パワーユニットやアクティブエアロデバイス(可動式の空力パーツ)などのディテールはそれぞれで異なっていた。
そして開発の最終段階で製作されたのが、ここで紹介する「197860」のシャシーナンバーを持つプロトタイプである。フェラーリはこれに「F150・プロトティーポ・プレシリーズ・PS1」というコードネームを与え、さまざまな走行テストやデモンストレーション、そして購入が確実視される重要顧客によるテストドライブなどに提供している。
最終段階で製作された貴重な1台が一般のオークションに登場した!
2013年に製作された「F150・プロトティーポ・プレシリーズ・PS1」のボディカラーはロッソ・コルサ(赤)とされたが、ルーフやバンパー、リアセクションはマットサテン仕上げのネロ(黒)でコーディネートされている。ドアにはゼッケンを掲げるための大きな白いサークルが描かれ、フロントガラスの上部やエンジンカバーにはタイヤを供給するピレリのデカール(ステッカー)が配されており、レーシングカーのようなキャラクターが表現されている。前後のホイールは生産型の「ラ フェラーリ」と同様に5本スポークのデザインであるが、フロントはシルバー、リアはネロのカラーで仕上げられている。

インテリアはネロが基調色となるレザーと、ラッカー仕上げのカーボンファイバーが特徴的である。シートはロッソがベースカラーとされているが、そこへさらにネロのトリムが施され、ヘッドレストには跳ね馬の刺繍も入っている。装備やスイッチ類は生産型のそれにほぼ等しいが、ステアリングホイールの下部には車名ではなく「F150」のプレートが備えられている。オドメーター(走行距離計)に記録された走行距離は1万207マイル(約1万6330km)である。
RMサザビーズのマイアミ・オークションには、同時に2015年式の「ラ フェラーリ」も出品されており、走行距離がわずかに554マイル(約891km)でボディカラーがネロの同モデルは、688万ドル(約10億7362万円)で落札されている。
今回紹介した「F150・プロトティーポ・プレシリーズ・PS1」は、もちろん世界のフェラーリ愛好家から熱い視線を集める存在であり、新たなオーナーの手に収まることになった。ただし、ナンバーの取得はできず公道での走行も不可能だ。そして一番の疑問は、フェラーリにとどまらず自動車メーカーにとって開発車両となるプロトタイプカーは秘密事項が多いため開発後には解体処分されるか、自社の博物館などに永久保存する形となるのが一般的だ。
しかしフェラーリには、ブランドへの貢献度が高い忠実な超VIP顧客を優遇する文化がある。ラ・フェラーリの開発プログラムが完了した際、フェラーリはこれらの貴重な車両をスクラップにするのではなく、「究極の栄誉」として選ばれたトップコレクターたちに密かに売却したのだ。このトップコレクターたちが手放す際に、RMサザビーズにオークションとして出品する依頼をしたためと思われる。
そのRMサザビーズだが、超希少なプロトタイプ車両の落札価格について一切の発表を行っていない。ラ フェラーリの最終プロトタイプであることを考えれば、想像される落札価格は相当に大きな数字となるはずだ。もちろん、世界に一台となるそのコレクションとしての価値は、計り知れないものである。
※為替レートは1ドル=161円(2026年6月22日時点)で換算







































































