お医者さんが長年所有し、ほとんど走らせないまま発見された1200kmの初代マツダ「RX-7」
走行距離1200kmという数字だけで、旧車好きの背筋は伸びる。手も加えていないのに新車同然という個体は、そうそう出てこない。今回、静岡県のタキーズが持ちこんだ初代マツダ「サバンナRX-7」は、まさにその1台だった。長年ガレージに眠り、最近になって姿を現したドクター所有の実車を、イベント会場で取材した。
フルレストア車と見まがう1978年式マツダ「サバンナRX-7」はレストアではなかった
この個体は、じつは手を加えて仕上げたクルマではない。ノスタルジック2デイズの常連である静岡県のタキーズのブースで、まるで新車のようなコンディションの初代サバンナRX-7を見つけた。すでに多くのパーツが欠品しつつあるSA22(型)を、これほどの状態でよみがえらせるのは相当な手間がかかったはずだ。そう考えて、タキーズ代表の瀧さんに話を聞いた。
「このクルマはレストア車ではないんです。お医者さんが長年所有していたクルマで、ほとんど走っていないまま最近発見されたんです。いわゆるバーンファインドってヤツですね」
バーンファインド(納屋などで長期間眠っていた未再生の個体が発見されること)という言葉のとおり、車両の素性は数字にも表れている。
「メーターを見てもらえばわかるとおり、走行距離もたった1200kmちょっとなので、おそらく購入当初にちょっと乗っただけで、そのあとはあまり乗っていなかったんだと思います」

オイルショック後に登場した1978年式SA22型サバンナRX-7とはどんなスポーツカーか
初代サバンナRX-7は、スポーツカー冬の時代に投入された野心作だ。 マツダ・サバンナクーペの後継として、サバンナRX-7の名で1978年3月に発売された。 RX-3の名で知られたサバンナの流れをくみ、マツダ伝統のロータリーエンジンを継承したモデルが、このSA22(型)にあたる。エンジンはサバンナGTから引き継いだ573cc×2ローターの12A型を積む。 排ガス規制を満たすため、あいついで馬力を落とす国産車の中にあって、RX-7の12A型2ローターエンジンは、当時の馬力表示であるエンジン単体でのグロス値で130psを誇った。
デビュー時期の逆風も、この130psの価値を高めている。 1970年代後半は、73年の第一次オイルショックのあと、ちょうど78年にはイラン革命を発端とする第二次オイルショックが起き、原油が値上がりした時代だった。 各社が大幅なパワーダウンを強いられたなか、RX-7の数字は当時としてかなり高性能だった。 当時のテスト値で、最高速度は177.34km/h、0→400m加速は17.52秒を記録している。
スタイリングもロータリーならではだ。 レシプロエンジン(ピストンが上下運動を繰り返して動力を生み出すエンジン)に比べ圧倒的に軽量小型であるため、フロントにエンジンを載せながら車体の中心近くに配置するフロント・ミッドシップと呼ぶパッケージングにより、前後の重量配分は、2名乗車時で50.7対49.3と、理想的なバランスを手に入れていた。 低いノーズを実現できたことで、以降3代にわたってRX-7はリトラクタブルヘッドライト(点灯時のみ格納部から現れる収納式前照灯)を採用する。 初期型の空気抵抗係数(Cd値)は0.36と、空気抵抗の少ない優れた数値だった。 端正なファストバッククーペは、いまも古さを感じさせない。
まるでタイムスリップしたような1200km実走のサバンナRX-7はどこが凄いのか
この個体の凄みは、細部を見るほど際立つ。外観は新車当時のオリジナルペイントで、モールやエンブレムも交換なしのまま残っている。ゴム類もほとんど劣化していない。屋内保管で紫外線の影響をほとんど受けなかったのが理由だろう。純正アルミホイールやフォグランプなど、初代オーナーがディーラーで選んだオプションパーツもそのまま備わる。

車内も驚くほど状態がいい。ダッシュボードに劣化や割れはまったくなく、GT特有のチェック柄シートも新品のように見える。 タータンチェック柄が特徴だったSA22のシートは、写真のベージュのほか、レッドやブラックも用意された。 手を加えていないからこそ、当時のマツダが送り出した姿そのものが保たれている。
さまざまな条件が重なり、製造から半世紀近くを経た現代に、新車のようなコンディションで現れた1台だ。タキーズで販売中とのことなので、条件が合えば、この個体のオーナーになれる可能性もある。
ほとんど走らないまま時を重ねた1台が、いまふたたび誰かの手に渡ろうとしている。走らせるのか、この状態のまま守るのか。次のオーナーの選択によって、このサバンナRX-7の物語は続いていく。眠りから覚めた奇跡の個体が、これから先どんな時間を刻むのか。その行方を静かに見届けたいと思わせる存在である。





































