わがまま派の夢を叶えるSUVとMTの二兎追えるモデルとは
筆者が免許を取得した昭和の時代、クルマはMT(マニュアル・トランスミッション、以下MT)が基本だった。教習所の教習車もMTだったし、初めて買うクルマも、慣れた教習車と同じMT。筆者の初めての愛車いすゞ117クーペも、20代半ば以降に所有したマツダ・ファミリア、ダイハツ・ミラ、ミニ、VWゴルフ2、マセラティ・ビトゥルボもMTだった(途中のいすゞピアッツア、日産フェアレディ280Zの北米仕様はATだったが……)。
そもそも、昭和のクルマ好きの間でATなんかに乗ろうものなら“クルマ好きにあらず!!”と言われかねなかったのである。筆者が初めてATにちょい乗りしたのは117クーペで、ナンパした当時の彼女が乗っていたのはバイオレットの3速ATだったのだが、MTに慣れた両足で2ペダルをスムースに操るのは難しく、ギクシャクと走って恥をかいた思い出がある。
日本車のMT比率が1%の現代でもMT仕様のSUVが存在
さて、ここでは現代のMT車、しかもSUVのMT車について触れたい。ここ何年も、日本国内の新車販売台数のうちMT車比率は1%台まで落ち込んでいる。つまり約99%は2ペダル車が売れているのである。そんななか、スポーツカーでもないSUVにMTで乗りたい……という人は、じつは少なくない。かつてのクロカン乗りはMTが基本だったし、最近になってSUVに乗り始めた人でもSUVのワイルドさを目いっぱい味わうには“MTの方がカッコいいのかも……”なんていう期待もあるはずだ。
過去を振り返れば、本格派クロカンを除いても、初代ホンダHR-Vや初代スズキ・ハスラー、2代目日産エクストレイルの20GTなどといったクロスオーバーSUVには、MTが少なからずラインアップされていた。エクストレイルの場合、初代は5速MTだったものの、2代目にラインアップされた欧州仕様のディーゼルモデルは当初6速MTのみの導入だったぐらいである(さすがに販売戦略上、のちに6速ATを追加)。
探してみるとMTを設定するクロスオーバーSUVが意外とある
では現在、国産SUV&クロスオーバーモデルにMTが設定されているクルマはどのぐらいあるのか。意外や意外、けっこうあることに気が付く。トヨタならスタイリッシュすぎるSUV、デザイナーズクロスオーバーモデルというべき「トヨタC-HR」のガソリン車に、iMTと呼ばれるトヨタとアイシンが共同開発したインテリジェントマニュアルトランスミッションが用意されている。これは現代のMTとして発進、変速をアシストしてくれるもので、一般的なMTより運転操作(ペダル操作)が楽で、扱いやすいのが特徴となる。
具体的には、発進時はクラッチ操作を検出し、エンジン出力を制御(トルクアップ)することで、クラッチによる発進操作をスムースに行うことができるようになるのだ。また、ドライブモードセレクトでSPORTモードにセットしてある場合は、iMTがスタンバイ状態となり、ドライバーが変速操作すると変速後のエンジン回転数を合わせるように制御。プロドライバーの操作のようなスムースな変速、加速が行えるわけだ。エンストをしないわけではないが、しにくいようにアシストしてくれたりもするのである。ちなみに初採用したのは、カローラスポーツの1.2Lガソリンターボモデルであった。