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35万キロ、2万回開閉、50度の灼熱……厳しいテストをクリアしたメルセデス「SLK」の偏執狂的開発のこだわりとは?

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TEXT: 妻谷裕二(TSUMATANI Hiroji)  PHOTO: メルセデス・ベンツ/妻谷コレクション

メルセデス・ベンツが考えるオープンボディの安全性とは

当時のクラスの基準を設定したといっていいSLKの安全哲学は、特筆に値した。万一の際、オープンボディにまず求められるのは横転、転覆時の安全性だ。SLKは、クロスメンバーに強固に取り付けられた2つのロールバーを採用し乗員を保護する。使用されている直径40mm、厚さ2.5mmのスチールパイプは、5tの圧縮力にもわずか数mmしか変形しない強度を備えている。またAピラーには、頑強に組み合わされた2本のスチールパイプを内蔵し、乗員保護にさらに貢献した。

とくに、メルセデス・ベンツ独自の基準による厳しい「ルーフ落下テスト」を余裕でクリアする高い強度を実現。このテストでは、軽く傾けた車体を50cmの高さから落とすことで、Aピラーの片方だけに全重量を掛ける。規定で許されるAピラーの変形はごくわずかなものとなった。

クラッシュテスト

衝撃吸収構造ボディでは、高強度鋼板の多用やマグネシウム製パーツの採用で軽量高剛性を追求。さらに、独特の湾曲構造を待った頑強な「カーブド・バルクヘッド」でエンジンルームと室内を隔てる革新的な安全構造を開発し足元が圧迫されるリスクを軽減した。

衝突テストでは、SLKはメルセデス・ベンツ独自の基準を満たし、規定された必須要件を上まわっていた。事実、オフセットクラッシュ(左右にずれた部分的衝突)時にボディ正面の一部に集中する大きな衝撃をフロアや左右のサイドメンバー方向に逃がし、室内への影響を大幅に軽減。エンジンやトランスミッションユニットの室内側への侵入を抑制した。さらに、SLKにはSRSエアバッグ(運転席・助手席)、SRSサイドバッグ、ベルトフォース・リミッター付きベルトテンショナーなどが標準装備されている。

初代SLK/R170モデルシリーズの4気筒及び6気筒エンジン

当初、ロードスターは直4のSLK200(136ps)とSLK230スーパ-チャージャー(193ps)が提供された。2000年のフェイスリフト後、V6のSLK320(218ps)とSLK32 AMG(354ps)とパワーアップした。

初代のSLK230には、ハイパフォーマンスと経済性を高次元で両立させたスーパーチャージャー付き2.3L DOHCエンジンが搭載された。吸排気効率に優れた4バルブ、つねに最適なバルブ開閉を可能するバリアブル・バルブタイミング機構、最適な点火と燃料噴射を同時に電子制御するエンジン・マネジメントシステムといった技術を採用。これら精密なエンジンテクノロジーとともに、先進のスーパーチャージャーを組み合わせている。

これはクランクシャフトからベルトで直接駆動される一対のロータリーで吸気を圧縮する装置。エアクリーナーからの吸気はスーパーチャージャーで圧縮され、インタークーラーで冷却され燃焼室に送り込む。このため、より多量の吸気が燃焼室内に充填され、鋭い加速性能をはじめとするハイパフォーマンスを優れた経済性とともに実現した。

さらに、独自のコーティング技術によってローター間のクリアランスをじつに0.2mm未満に抑え、吸気量の少ない低回転時も高い圧縮効率を実現。ローターの中空化による軽量設計と相まって、ターボで問題とされるような「アクセル操作に対するレスポンスの遅れ」を感じさせない。また、パワーロスの低減と信頼性向上のため、必要なときだけスーパーチャージャーを作動させる電磁クラッチも装備していた。

* * *

コンパクトカーだからといって妥協することなく、厳しい環境でテストを重ね安全性も追求したことで、オープンカーならではの爽快な走りが実現したと言っていいだろう。

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  • ミヒャエル・マウアーさん
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  • 妻谷裕二(TSUMATANI Hiroji)
  • 妻谷裕二(TSUMATANI Hiroji)
  • 1949年生まれで幼少の頃から車に興味を持ち、40年間に亘りヤナセで販売促進・営業管理・教育訓練に従事。特にメルセデス・ベンツ輸入販売促進企画やセールスの経験を生かし、メーカーに基づいた日本版のカタログや販売教育資料等を制作。またメルセデス・ベンツの安全性を解説する独自の講演会も実施。趣味はクラシックカー、プラモデル、ドイツ語翻訳。現在は大阪日独協会会員。
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