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「ヨタハチ」ことトヨタ「スポーツ800」は「地上に降りた小さな航空機」愛らしいフォルムはいまもカワイイ!【国産名車グラフィティ】

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TEXT: 片岡英明  PHOTO: 芝 修/一般社団法人日本自動車工業会/Auto Messe Web編集部

パブリカのエンジンをボアアップで790ccに拡大

ネーミングを募ったときはトヨタGTの名も噂された。だが、審査の結果、正式車名は「トヨタスポーツ800」に決定する。正式発表はモーターショーから半年後の1965年3月17日。発売開始は4月1日だった。トヨタとしては初めてのスタイリッシュな2人乗りのライトウエイトスポーツカーである。パワーユニットやサスペンションなど、主要なメカニズムはベーシック・ファミリーカーとして実力の高さを知られているパブリカと共通だった。

エンジンは強制空冷式のU型水平対向2気筒OHVをベースに、ボアを5mm広げて83.0mmとしている。ストロークは73.0mmのままだが、総排気量は697ccから790ccへと拡大。同時にクランクシャフトやピストン、バルブスプリングなどの主要パーツを強化している。圧縮比は9.0だ。また、キャブレターのベンチュリー径を26φから28φへと広げ、SUタイプを1気筒につき1基のツインキャブ仕様とした。エンジン型式は2U型となった。

最高出力が45ps/5400rpm、最大トルクは6.8kgm/3800rpmを発生する。動力性能は、パブリカのU型エンジンより大幅に引き上げられていた。とはいっても排気量の小さいホンダS600のAS285E型(606cc・直列4気筒DOHC・57ps/8500rpm)と比べると、アンダーパワーだった。

トランスミッションはフロアシフトの4速MT。ギア比を変え、クロスレシオとした2速から4速まではシンクロ機構を組み込んでいる。後期モデルはフルシンクロとなる。

非力だが、優れたエアロダイナミクスと600kgを切る軽量ボディによって最高速度155km/hをマークした。0-400m加速も18.4秒の俊足を誇っている。

ショートストロークの4速MTは小気味よいシフトフィーリングだった。ちなみに平坦舗装路の定地燃費は31.0km/Lと軽自動車を凌いでいる。今の時代にも通用する、エコ性能の高さが際立つスポーツカーだった。

燃費のよさはレースでも証明されている。1966年1月に開催された鈴鹿500kmレースでは、大型のガソリンタンク(69L)を積んだトヨタスポーツ800が、排気量に勝る日産スカイライン2000GT-Bやロータス・レーシングエランを破って優勝と2位の座を勝ち取った。

勝因は、やはり群を抜く燃費のよさと優れたエアロダイナミクス。2台はスリップストリームを駆使して燃費を稼ぎ、1度も給油することなく500kmを走り切っている。1967年の富士1000kmレースと富士24時間レースでもトヨタ2000GTに続いて表彰台に上がった。世界に誇るライトウエイトスポーツカーの傑作と言えるだろう。

脱着式ディタッチャブルハードトップはポルシェ911より先に採用

パブリカ700の型式はUP10、これに対しトヨタスポーツ800にはUP15の型式が与えられた。さらに、いつしか「ヨタハチ」というニックネームも定着した。メカニズムにパブリカと共通するところは多いが、エクステリアはまったくの別物だ。型式を知らなければ兄弟関係にあると思わないだろう。

トヨタスポーツ800の原形は、前述したとおりパブリカ・スポーツだ。量産モデルもほとんど同じデザインのまま市販に移された。ショーカーは全長3510mm、全幅1454mm、全高1180mm。これに対し量産モデルは全長が70mm延びて3580mm、全幅は1465mmと11mm広げられている。全高は5mm下がって1175mmと、当時の日本車ではもっとも背が低かった。

エクステリアはオーバルシェイプのキュートなデザインで、空冷エンジンのためフロントマスクもシンプルだ。丸型のヘッドライトは奥まった位置に装備され、バンパーガードはナンバープレートの左右に縦長のものが付けられている。前期型のフロントグリルはトヨタの「T」を2つ横に組み合わせたデザインだ。じつはグリルの内側には、冬にエンジンの冷え過ぎを防ぐためのフラップが隠されている。

ノーズ先端が低いため、涙滴型のウインカーランプをフェンダー上に装備。そのためフェンダーミラーはドライバーに近い位置に取り付けられた。キャビンで注目したいのは、脱着式ディタッチャブル・ハードトップの採用だ。ポルシェ911のタルガトップが有名だが、採用はヨタハチの方が早い。太いリアクオーターピラーにはベンチレーションルーバーを装備している。

軽量化が難航したため、ルーフは量産化の間際にアルミ製へ、リアガラスもアクリル製へと変更している。また、燃料タンクも30Lタンクへと小さくされた。

これに対しエアロダイナミクスは優秀だ。レーシングカーに近い前面投影面積を実現し、空気抵抗係数は0.30を少し上まわる数値を達成している。だから非力なエンジンでも150km/hを超える最高速度を可能にしたわけだ。

ステアリングギアは平凡なウォーム&ローラーで、サスペンションもシンプルなレイアウトだ。フロントはダブルウィッシュボーン/トーションバー、リアはリーフスプリングのリジッドアクスルである。だが、580kgの軽量ボディとのバランス感覚は絶妙だった。ブレーキは2リーディングとリーディングトレーリングの4輪ドラムだ。これまた特殊なものではない。

優れた機能性と視認性を確保したメーター配置

インテリアはタイトな空間だ。だが、2人だけの空間なので窮屈ではない。ダッシュボードは水平基調で、運転席側にはアルミのパネルを張り、スパルタンなムードを演出している。ドライバー前にはひとつおきに大小の丸型メーターを並べた。右端の小ぶりなコンビネーションメーターは電流計と燃料計だ。その左側には大きなスピードメーターがあり、オドメーターに加え、トリップメーターも組み込まれていた。

ステアリングポストの上には、空冷エンジンにとって重要な油圧計と油温計を並べている。左端がフルスケール8000rpmまで刻んだタコメーターだ。シンプルだが、情報を把握しやすい。

ダッシュボード中央にはアルファベット表示の操作スイッチが並び、下の段にイグニッションキーの鍵穴を設けた。ステアリングはT字形をモチーフにした細身の3本スポークタイプ。ホーンボタンには赤く縁取りしたTマークが付く。

高いフロアトンネルの上には短いストロークのシフトレバーが突き出している。車内が狭いため、パーキングブレーキレバーは助手席側だ。シートはサイドサポートを高めたバケットタイプだが、ヘッドレストはない。収納スペースが少ないので、2つのシートの間の後方に収納ボックスを組み込んだ。それだけではなく、小物を置けるように、シート後方にパーシェルトレイを設けている。ジッパーがあり、ここを開ければトランクから小さい荷物を取り出せるなど、随所に工夫を凝らしていた。

自慢のディタッチャブル・トップは簡単に取り外すことができ、手軽に爽快なオープンエアモータリングを愉しむことができる。トップを被せればセダンと変わらない快適性を確保できた。最後のマイナーチェンジは1968年3月だ。トヨタを保守的だと言う人が多い。だが、60年近く前は、現代にも通用する最先端のライトウエイトスポーツカーを生み出したのである。

トヨタスポーツ800(UP15)
●年式:1965
●全長×全幅×全高:3580mm×1465mm×1175mm
●ホイールベース:2000mm
●トレッド(前/後):1203mm/1160mm
●車両重量:580kg
●エンジン:2U型空冷水平対向2気筒OHV+SUツインキャブ
●総排気量:790cc
●最高出力:45ps/5400rpm
●最大トルク:6.8kgm(666Nm)/3800rpm
●変速機:4速MT
●駆動方式:FR
●サスペンション(前/後):ダブルウイッシュボーン・トーションバー/半楕円リーフスプリング
●ブレーキ(前/後):リーディングトレーリング/リーディングトレーリング
●タイヤ:6.00-12-4PR
●価格:59万2000円

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