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「ダブルバブル」になった本当の理由は? 50年代レースを席巻したアバルト「750GTザガート」伝説を振り返る

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 横澤靖宏

1958年式フィアット・アバルト750GTザガート・ダブルバブル

1955年春に登場したイタリアの国民車、「フィアット600」をベースとするチューニングカーとして、アバルトは 「750デリヴァツィオーネ」を同年末に投入。これは、おそらく自動車史上でも世界初となるコンプリートのチューニングカーと見なされている。750デリヴァツィオーネは、さっそく翌56年春の「ミッレ・ミリア」で大活躍を見せるなど、当時のモータースポーツの現場に華々しい登場を果たすことになった。

アバルトとザガートが手を組んだレーシングGT

そしてカルロ・アバルトは、次なるアイデアを即座に実行に移す。それはアバルト750デリヴァツィオーネの基本コンポーネンツを流用した、純粋なスポーツカー&レーシングGTマシンを開発することだった。

キット形式でも販売された750デリヴァツィオーネ用のエンジンは、スタンダード600用の4気筒OHVエンジンに備えられた簡素な鋳鉄製クランクシャフトを、輝くほどに美しい鍛造製に換装。排気量を633ccから747ccにアップさせていた。また、ヘッドまわりにもチューンを受けたうえに、ダウンドラフト式ウェーバー社製キャブレターは32IMPEまで大径化され、「ABARTH」ロゴが浮き出されたアルミ製専用インテーク・マニフォールドに装着された。

これらのチューニングにより、ノーマル600と比べるとほぼ2倍、21.5psから41.5~47psまで増強されたエンジンを搭載した750デリヴァツィオーネだが、エンジンにこれだけ多岐にわたるチューニングが施されたのに対し、シャシーはレーシングGTであってもストックのまま。これは決して手を抜いたわけではなく、その必要が無かったからである。

こうしてフィアット600用フロアパンとアバルト製750デリヴァツィオーネ・ユニットを、当時のイタリアには数多く存在していたカロッツェリアに供給することとしたアバルト& C.社は、1955年のトリノ・ショーにて、「207A」以来アバルトとともに確たる実績を挙げてきたカロッツェリア「ボアーノ」とともに、「210A」という小さなレーシングバルケッタを発表する。これがフィアット600をベース車両とした、初のアバルト車となった。

210Aはそののち生産モデルとなるスパイダーも製作され、若干数が量産されたというが、実は同じ1955年のトリノ・ショーにて、カルロは運命的な出会いを果たしていた。それはミラノを代表する名門カロッツェリア「ザガート」が、フィアット600をベースに自主製作したベルリネッタだった。

このクルマのポテンシャルを認めたカルロは、1台のレーシングGTの製作をザガートにオファーした。この提案に応えて製作されたのが、のちに「フィアット・アバルト750GT」の主力となったベルリネッタの最初期モデルである。

そしてフランコ・スカリオーネと「ベルトーネ」の手による空力的なクーペ、「カロッツェリア・ヴィオッティ」製の瀟洒なクーペ、「カロッツェリア・ギア」が、スタンダード750デリヴァツィオーネを豪華にドレスアップしたモデルとともに翌1956年のジュネーヴ・ショーに出品された。その4台の中でも最も大きな反響を得たことから、量産化が決定するに至った。

ところが、ザガートが空力を追求するあまり徹底して低く設定されたルーフは、カルロ自身をはじめとする大柄なドライバーがヘルメットをかぶって乗るにはヘッドルームが不足してしまうとの評価を受けたことから、この年秋のトリノ・ショー以後に製作されたシリーズ2では、ルーフの左右に大きな「こぶ」を追加。のちにアバルトのアイデンティティとなる「ダブルバブル」が誕生することになった。

ところが、それからわずか数カ月後の1957年初頭には、ノーズをいっそう洗練したデザインとし、リアエンドもスタイリッシュなテールフィン状にソフィスティケートした完成形、いわゆる「シリーズ3」に進化を果たした。

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