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4500万円で落札! BMW「3.0CSL」の最終進化版「バットモービル」は腐りやすかった!?

4500万円で落札! BMW「3.0CSL」の最終進化版「バットモービル」は腐りやすかった!?

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2023 Courtesy of RM Sotheby's

有名な広報車両だったバットモービルは、4500万円で落札!

生産期間・台数ともに非常に限られた3.0CSLながら、エボリューションモデルの常として、細かいアップデートが施されていた。その最たる例は、年次ごとに異なるエンジンである。

直列6気筒SOHCの「ビッグシックス」ユニットは、当初3.0CSと共通となるツインキャブレター付き2985cc・180psとされていたが、1972年モデルの、いわゆる中期型ではインジェクション化されるとともに3003ccに拡大。さらに1973年モデルとなる後期型では、3153cc・206psにパワーアップされた。

今回、RMサザビーズ「Villa Erba」オークションに出品された3.0CSLは、最終進化形にあたる1973年モデル。ドキュメントには、1973年8月1日に完成したとの履歴が残されている。

最終型ということで、3153ccまでスケールアップされたビッグシックス・エンジンを搭載するともに、西ドイツ国内では建前上後付けのオプションとして設定されたという、過激なエアロキットを装着した167台のうちの3台目とのことである。

ラインオフののちには、すぐにBMWミュンヘン本社の広報車両&オフィシャルカーとして、「M-CE360」のナンバープレートを付けて登録され、ドイツの老舗モータースポーツ専門誌『Rallye Racing』1974年1月号のグラビアページを飾っている。

その後、走行距離8900kmまで到達した段階で、このCSLはドイツZDF放送局の人気ニュース番組『Heute(ホイテ)』で長年キャスターを務めていたヨッヘン・ブライター氏に売却され、2021年まで同氏が最初で唯一の個人オーナーであり続けた。個人の登録ナンバー「K-TV123」を取得したこのバットモービルは、1991年までブライター氏の日常のアシとして愛用されていたという。

1980年、ブライター氏は懇意にしていたBMWディーラーに依頼し、工場出荷時と同じ純正スペックの新品CSLボディパネルに換装させた。これは、3.0CSLのボディワークがホモロゲートのため軽量薄板で仕立てられ、市販車として充分な防錆処理が施されていなかったため。当時は、しばしば行われていたこととされている。

来歴・現状のコンディションともに申し分のない1台

また40年以上にわたる所有期間中に、ブライター氏はブラウプンクト社製の「ベルリン」ステレオ、レザー/ファブリック・コンビのインテリア、レカロ社製の純正スポーツシート、「ドッグレッグ」パターンを持つゲトラグ社製265型5速トランスミッション、そしてエンジン内部のリビルドなど、13万4000ドイツマルク相当の改良を行わせている。さらに1992年から1996年にかけて、このCSLはシュトゥットガルト近郊に拠点を置くMKモータースポーツによってレストアされた。

2021年にブライター氏の家族から現オーナーに引き渡されたのち、過去1万5000kmの間に、この素晴らしい3.0CSL バットモービルには、新品のミシュランXWXタイヤとビルシュタイン社製サスペンションが装着され、ブレーキとクラッチのオーバーホール、エンジンの包括的な整備が行われたとのこと。すなわち、来歴・現状のコンディションともに申し分のないバットモービルであると、RMサザビーズ欧州本社からのリリースではアピールされていた。

■深遠なるBMWの世界に誌面で触れる!

BMW3.0CSLバットモービル

そして2023年5月20日に行われた競売では、28万6250ユーロ。日本円に換算すれば、約4500万円で落札されることになった。

バットモービルの由来となった純正エアロパーツの有無、あるいはメカニカルコンディションによって、3.0CSLのマーケット価格は左右される。近年では2000~3000万円あたりでの販売事例が多かったことを勘案すれば、今回のヴィラ・エルバはなかなかの大商いだったといえるだろう。

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  • (C)2023 Courtesy of RM Sotheby's
  • (C)2023 Courtesy of RM Sotheby's
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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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