2分割で着脱可能なルーフ
それだけにエンジン内部の構成部品もレーシングカーそのもののプロフィールだ。チタン製のコンロッドに軽合金製のシリンダーヘッドとクランクケースを持ち、吸気側には可変バルブタイミングシステムも採用している。シリンダー内部にはニカシルコーティングを施し、注目の最高出力はジュネーブ・ショーでの発表時点で612ps、最高回転数は8400rpmに設定された。このエンジンにはポルシェ製のカーボンセラミックコンポジットクラッチを備えた6速MTを組み合わせ、パワーは後輪に伝えられる。
ボディデザインでは、かつての「917」などポルシェ製コンペティションモデルの姿を彷彿させるディテールも盛り込まれたカレラGTは、もちろんエアロダイナミクスにおいても高性能なものであった。ボディパネルはやはりカーボンコンポジット素材によるもので、車重は1380kgと発表。
2分割で着脱可能なルーフはフロントのラゲッジ・コンパートメントに収納することができた。サスペンションは前後ともダブルウィッシュボーン式で、ダンパーとサスペンションアームはプッシュロッドで連結される。ブレーキはPCCB(ポルシェセラミックコンポジットブレーキ)。フロントに19インチ、リアには20インチ径のマグネシウム合金製センターロックホイールを装着する。
走行距離は約8800キロ
今回出品されたカレラGTは、RMサザビーズの調べによれば、1270台しか生産されなかった(当初の生産計画は1500台だった)カレラGTの中で、アメリカ市場向けとされた664台のうちの1台。実際に販売されたのは2005年2月のことだ。
コンディションの素晴らしさは画像からも十分に理解できるところだが、これは新車時からのマイレージが、わずかに5500マイル(約8800km)未満であることが大きな理由とされる。オークション直前の2023年8月にはポルシェ・サービス・センター・アトランタによるメンテナンスも受けており、オーナーズマニュアル一式や純正のラゲッジバッグセットも付属していた。
テコラッタ・カラーのオールレザー・インテリアに、GTシルバーメタリックという、典型的なカレラGTのカラーリングで仕上げられている。出品車両には、ル・マン24時間レースを1977年、1983年、1994年の3回にわたって制覇するなど、華々しいレース・キャリアをポルシェとともに築いたアメリカ人レーサー、ハーレイ・ヘイウッドのオートグラフも入れられている。149万ドル(邦貨換算約2億1605万円)という落札価格も妥当、といったところなのだろうか。