走行距離は9500km弱
今回RMサザビーズオークションに出品された959は、エアコンやレザーシートなどを装備した、コンフォートだ。1987年に製造された959コンフォートは106台といわれていて、その中の1台となる。
その履歴ははっきりしている。ドイツで不動産業や建設業を営んでいたフランツ・サリンガー氏が最初のオーナーで、1988年8月、工場から直接納車されている。ダークグレーのレザーインテリアとポーラシルバーのボディカラーは、氏のリクエストによるものだ。
その後この個体は約30年前、日本へと輸出されている。そのオーナーは1972年式911Sや964型の911に加えて、ポルシェ356も所有しているエンスージアストだった。そのため959に乗るのは、深夜の高速道路が主だったそうで、走行距離も9500km弱と、欧米の感覚ではほぼほぼ走っていない状態となっていた。ただしRMサザビーズのカタログには、エンジンは始動するが公道走行のためには整備が必要というノートが付されている。
そんな個体に付けられたエスティメートは、それでも100万USドル〜150万USドル(邦貨換算約1億4800万円〜2億2100万円)というものだったが、ハンマープライスは171万USドル(邦貨換算約2億5000万円)とエスティメートよりも高額となった。
300台に満たない生産台数である希少車で、当時の最先端技術を惜しみなく盛り込んだコンペティションベース車ということを考えれば、まっとうなプライスと言っていいだろう。バブル景気もあって、959はかなりの数が日本に上陸していたようだが、最近ではめっきり公道で見ることもなくなった。日本に残存する車両は程度がよく、価格が高騰していることもあって海外へ流出している一例である。