わずか1年のみの生産だった
一方のターボモデルについては、ポルシェはもちろん最新のM64型ユニットをターボ仕様とする計画を持ち合わせていたが、そのプランは若干遅れ、当初は930型911ターボのM30型3.3Lターボエンジンをさらにチューニングして市場へと投入された。
実際に今回RMサザビーズのモントレー・オークションに出品された3.6Lのターボエンジンは、3.6LのM64型エンジンをベースに360psの最高出力を発揮させたM64/50型エンジンを搭載したもので、燃料供給は機械式燃料噴射のボッシュ製KEジェトロニックによって行われている。レッドに塗装されたブレーキキャリパーやスピードライン製の3ピース18インチ径ホイール、20mmローダウンされた車高やRSと同タイプのリアセンターバンパーなどが新たに装着されたのも特徴だ。
964 3.6ターボは1993年2月に発表され、1993年と1994年のモデルイヤーにのみ販売された。そのため生産台数は非常に少なく、ワールドワイドでも生産台数は1500台に満たなかったとされる。出品車はその中でもライトグレーとブラックレザーのインテリアに、ミッドナイトブルーメタリックという珍しいエクステリアカラーで仕上げられた一台。走行距離はわずかに2万5600kmと、1993年9月にドイツのカスタマーに納車されたことが信じられないほどに小さなマイレージを刻むのみだ。
プロダクションの資料によれば、この964 3.6ターボには容量が92Lのガソリンタンク、電動スライディングサンルーフ、高級なレザーシート、オーディオシステムなどのオプションのほかに、ポルシェのオーナーブック、救急箱、ロードトライアングル、レジストレーション・ドキュメントなどが付属している。
RMサザビーズの予想落札価格は、その希少性やコンディションを高く評価した50万~60万ドル(邦貨換算約7250万円~8700万円)と提示されていたが、落札価格はちょうどその中間付近の55万5000ドル(邦貨換算約8050万円)で落ち着いた。
クラシックとなっても、一切その価値を失わないポルシェ911。特に2010年代を迎えると、投機の対象として964型911には熱い視線が集中し、取引価格も異様な高騰を見せるようになった。ポルシェというブランドはこれからも911を中心に、クラシックの世界において、大きなムーブメントを作っていきそうな気配である。













































































