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「好きなのに乗っていいよ!」「じゃあ、フィアット8Vで!」博物館の貴重なクルマを極東のジャーナリストに預ける懐の深さよ【クルマ昔噺】

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TEXT: 中村孝仁(NAKAMURA Takahito)  PHOTO: 中村孝仁

中低速トルクがない8Vに手こずりながらも……

8Vとなった車名の由来は元来ストレートにV8と行きたかったところ、そのネーミングは当時フォードによって登録されていて使えなかったため、ひっくり返したといわれる。そしてフィアットらしいといえばフィアットらしく、排気量は小さく2Lに収めた。V8のアングルは70度、ウェーバーのツインチョークキャブを2基搭載し、初期型のパワーは105hpだったという。

博物館にあったのはどうやらこの仕様のようだった。合計114台(しか作られていない)が生産され、そのうち34台がフィアットのスペシャルボディ・デパートメントによるもので、デザインは当時フィアットのデザインディレクターだった、ファビオ・ルイジ・ラピによるもの。30台がザガートによって架装され、他にもヴィニャーレやギアなども異なるデザインのボディに仮装している。

さて、このクルマ、「明日博物館の前に置いておくから」と言われ、翌日行ってみると本当に正面玄関の前に駐車されていた。同じくアバルト124スパイダーもである。そして手始めにというか最初に乗ったのがこのクルマだった。

行先はトリノヴァレンティノ公園。流石に古いクルマだし、博物館の展示車だしということで恐る恐るのドライブだったのだが、隣に乗るある意味お目付け役のイタリアンがとにかく飛ばせという。

バレンティノ公園までは結構な山坂があるから必然的に引っ張る必要があるのだが、如何せん2LのV8は中低速トルクがまるでない。だから早めのシフトアップではすぐにエンジンがぐずり始める。それを知っていて隣のイタリアンは「presto! presto!」と連発するのである。まあ意味としては「飛ばせ!」である。

挙句の果てにはシフトアップしようとする僕の右手を抑えにかかったりしていたので、やはり回転は上げないと駄目だったようだ。結局5000rpmあたりまで上げると調子よく走っていた。

実はこのクルマ、フィアットの公式な博物館のサイトを見たら、2012年にミレミリアを走っていてその時ドライブしたのはなんと、当時のFCA会長、ジョン・エルカン氏だったという。彼よりも先にこのクルマに乗れたというわけで、博物館のクルマを日本のいちジャーナリストに預けてしまう懐の深さを痛感したという次第である。

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  • 中村孝仁(NAKAMURA Takahito)
  • 中村孝仁(NAKAMURA Takahito)
  • 幼いころからクルマに興味を持ち、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾る。 大学在学中からレースに携わり、ノバエンジニアリングの見習いメカニックとして働き、現在はレジェンドドライバーとなった桑島正美選手を担当。同時にスーパーカーブーム前夜の並行輸入業者でフェラーリ、ランボルギーニなどのスーパーカーに触れる。新車のディーノ246GTやフェラーリ365GTC4、あるいはマセラティ・ギブリなどの試乗体験は大きな財産。その後渡独。ジャーナリスト活動はドイツ在留時代の1977年に、フランクフルトモーターショーの取材をしたのが始まり。1978年帰国。当初よりフリーランスのモータージャーナリストとして活動し、すでに45年の活動歴を持つ。著書に三栄書房、カースタイリング編集室刊「世界の自動車博物館」シリーズがある。 現在AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)及び自動車技術会のメンバーとして、雑誌、ネットメディアなどで執筆する傍ら、東京モーターショーガイドツアーなどで、一般向けの講習活動に従事する。このほか、テレビ東京の番組「開運なんでも鑑定団」で自動車関連出品の鑑定士としても活躍中である。また、ジャーナリスト活動の経験を活かし、安全運転マナーの向上を促進するため、株式会社ショーファーデプトを設立。主として事業者や特にマナーを重視する運転者に対する講習も行っている。
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