映画俳優たちの定宿エル・ランチョ・ホテル
アルバカーキの次に目指すのはアリゾナとの州境に近いギャラップだ。ここにも泊まることそれ自体が目的となる宿がある。1936年にオープンした「エル・ランチョ・ホテル」で、映画の父と呼ばれるD・W・グリフィスの兄、R・E・グリフィスが撮影の拠点とするべく建設した。当然ながら往年の大スターや監督たちが宿泊し、有名どころでは後に大統領となったロナルド・レーガンをはじめ、カーク・ダグラスやジョン・ウェインなど錚々たるメンツが並び、ホテルの各部屋には彼らの名前が付けられている。
2階まで吹き抜けのロビーはネイティブ・アメリカンの調度品を中心に、長い歴史と俳優たちの定宿であったことを偲ばせる豪奢な作り。フロントをはじめスタッフの応対はジェントルだし、館内にあるレストランやバーもいい雰囲気だ。ルート66が廃線になった後は荒廃した時期もあったようだが、見事に立て直し近隣でも人気の宿として知られている。週末は満室が当たり前という繁盛ぶりで、泊まりたいなら事前の予約は必須だろう。
ちなみに同じ敷地にはちょっとリーズナブルな「エル・ランチョ・モーテル」もあり、建物こそ新しめだが内装の雰囲気は負けず劣らずなので、そちらに泊まって食事を本館で済ますのもひとつの手だ。
地元の英雄「ヒロシ・ミヤムラ」の足跡を辿ってみよう
余談だがギャラップの街をドライブすると、やけに「Miyamura」なる名前が目に付く。気になって調べたところヒロシ・H・ミヤムラというギャラップ出身の日系人で、第2次世界大戦はアメリカ合衆国の軍で最多の勲章を受けた通称「442部隊」に所属し、朝鮮戦争では撤退する味方を援護し捕虜となり28カ月もの長期にわたって拘留。後に大統領のドワイト・アイゼンハワーから名誉勲章を授与された、いわば地元の英雄であり2022年11月に97歳で亡くなっている。ヒロシ・H・ミヤムラ・ハイスクールやミヤムラ・オーバーパスなど、いずれもエル・ランチョ・ホテルから近いので探し歩くのも一興だ。
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ギャラップから30分も走ればアリゾナ州だが、その前にもうひとつ寄り道したい場所がある。感動というよりも畏怖すら覚える大絶景、秘境ミューリー・ポイントまでドライブしてみよう。
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