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走行4390キロのフェラーリでも人気がない!?「400i」がコレクターにも敬遠される理由とは

走行4390キロのフェラーリでも人気がない!?「400i」がコレクターにも敬遠される理由とは

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2023 Courtesy of RM Sotheby's

走行履歴の少ないフェラーリは、やはりリスキー?

これまでの通例からすると、365GT4/2+2から「412」に至る一連の4シーターモデルは、現在のクラシックカー市場においてはリーズナブルな投資で入手できる反面、ちゃんと維持してゆくにはもっとも手がかかる。結局は、もっとも金もかかるフェラーリのひとつと目されている。

今回RMサザビーズ「LONDON」オークションで販売された400iは、1983年に生産された右ハンドル+3速AT仕様である。

この400iは「ファクトリー・フレッシュ・コレクション」にとって、初めての「カヴァッリーノ・ランパンテ」のバッジをつけたクルマのひとつ。同コレクションに所蔵されているほかのフェラーリたちと同様、新車としてシンガポールのホンセ・モーターズに引き渡されて以来、現在に至る40年間のほとんどを倉庫のなかで過ごしてきたという。

それゆえ、公式オークションカタログ作成時のオドメーターに刻まれたマイレージはわずか2743マイル。約4390kmに過ぎないいっぽうで、エンジンおよびトランスミッションともにマッチングナンバーが維持されている。

歴代の2+2フェラーリの伝統にしたがって、デザインワークのみならず架装までピニンファリーナで行われたボディは、ダークブルーにペイント。「クレマ(クリーム色)」のインテリアも、走行距離を裏づける美しいコンディションを誇っている。

この魅力的な400iの時代を超越したスタイリングは、クラシック・フェラーリのファンだけでなく、グランドツアラー愛好家にもアピールする……、と期待したRMサザビーズ欧州本社は、「ファクトリー・フレッシュ・コレクション」との協議の結果、5万ポンド~8万ポンドというエスティメート(推定落札価格)を設定。これは日本円に換算すれば約905万円~約1450万円という、現況の400iにしてはなかなか強気の見立てであるとともに、今回の出品を「Offered Without Reserve(最低落札価格なし)」で行うことを決定した。

この「リザーヴなし」という出品スタイルは、特に対面型のオークションでは確実に落札されることから会場の空気が盛り上がり、参加者が競ってビッド(入札)が進むこともあるのがメリット。しかしそのいっぽうで、たとえ出品者の意にそぐわない安値であっても落札されてしまうリスクもある。

ところが11月4日には競売にかけられたはずが、なぜか「Not Sold(流札)」に終わってしまった。

これは筆者の予想、ないしは邪推に過ぎないのだが、おそらくは出品者側の期待に沿うような入札額に至らないことを危惧して、RMサザビーズが早々に出品を停止した可能性が否めない。

美しいスタイリングにゴージャスきわまるインテリア、魅力の点では申し分がないいっぽうで、安いからといって安易に飛びついてはならないクラシック・フェラーリの典型例である400iゆえに、たとえ新車のようなコンディションを誇っていても走行履歴が極端に少ない個体は敬遠される。

今回のオークションについていえば、そのリスクに挑む入札者が現れなかったということだろうと思われるのである。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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