わずか61台しかないうちの1台
ザガートは2011年にはコルサ(レース)バージョンを、翌2012年にはストラダーレ(ロード)バージョンを出品。ベースとなったモデルは、いずれもアストンマーティンの「V12ヴァンテージ」で、そのなめらかなフロントノーズの中には、「DBS」で初採用された5.9LのAM11型V12気筒エンジンが517psの最高出力、そして570Nmの最大トルクで搭載されていた。
発表時には150台とされた限定生産数だが、結局それが61台で終了したのは、アストンマーティンがOne-77の生産に集中しなければならなかったという事情があった。もっともそれによってV12ザガートは、さらなる希少価値を得ることになったわけだが。
2020年には、アストンマーティンがイギリスのR-リフォージ社と提携し、このV12ザガートのクーペとコンバーチブルを19組(合計38台)生産する、ヘリテージ・ツインの企画も発表された。センターロック式の19インチ・アロイホイールや固定式リアウイングなどを採用するとともにエンジンの出力は600psに向上。それはアストンマーティン、そしてザガートのファンにとっては、とても魅力的な組み合わせであり、また商品といえた。
パリ・オークションに出品されたアストンマーティンV12ザガートは2012年に工場から出荷され、アロロ・グリーンのボディカラーにサハラ・タンとアークティック・ブルーのハイドインテリアを組み合わせた仕様。オリジナルのオーナーから譲り受けたというこのモデルはほとんど使用されておらず、出品時の走行距離はわずかに1228km。完璧な状態で現れた、この希少かつコレクター垂涎のV12ザガートは、まさにショールーム・コレクションと呼ぶにふさわしい。
RMサザビーズもそのコンディションには十分な自信を持っていたのだろう。予想落札価格を40万~50万ユーロ(邦貨換算約6400万円~8000万円)と提示。最終的な落札価格は、ちょうどその中間に近い45万5000ユーロ(同7280万円)という結果になった。