シューマッハのオーダーは6MTであること
1995年に発表されたばかりのF355シリーズは、当時フェラーリのラインアップの中では最も新しいモデルであり、スクーデリア・フェラーリの新人ドライバーがドライブするには、まさにベストなモデルといえたのだろう。
製作当時の記録によれば、ボディカラーはブルー・ルマン(カラーコード:516/C)、インテリアのレザーはペラ・クレマ(同:A3997)で美しく仕上げられており、それは現在でも変わるところはない。唯一の変化といえば、ドライバーズシートのシートバックに、シューマッハのオートグラフ(サイン)が施されていることだが、そのストーリーについては後でまた触れることにしよう。
シューマッハからの希望は、6速MT仕様であることだったと伝えられており、実際のデリバリーはフェラーリ・ドイッチュランド社から、シューマッハが2位でフィニッシュしたニュルブルクリンクでのヨーロッパGPの2日後に行われている。その後シューマッハは、2002年5月までこのF355 GTSを所有していたと考えられるが、その後オーナーはフランスのムーギンに住むピエール・ヴァレンティン、そして同じフランスのヴァリロルに居を構えるクリストファー・アレンへと変わる。
現オーナーが手に入れたのは2004年に開催されたモナコ・ヒストリック・グランプリにあわせて行われたオークション。この時すでに例のシートバックにはシューマッハの所有車であったことを裏づけるサインや、ディーラーとの間で交わされた書簡も添えられていたという。
そして「ZFFXR42B000105416」のシャシーナンバーを持つこのF355 GTSは、2020年にはフェラーリ・クラシケの認定を受ける。クラシケでは現在搭載されているエンジン(エンジンナンバー44042)はシューマッハに与えられた当時のそれとは異なるという見解を唱えたが、シューマッハに新車でF355 GTSが納車された時、そこにアップグレードされたエンジンが搭載されていた可能性もあるという。もちろん決定的な証拠はないが。
今回RMサザビーズは、このシューマッハが長年にわたり所有したF355 GTSをシールド・オークション(入札額や落札額が一切明らかにされない方式のオークション)で2025年2月4日から7日まで入札を受け付けたが、おそらくかなりのプレミアムがついた価格で落札されたことは間違いない。シューマッハとこのクルマとのつながりは、ファンにとってはなによりの魅力といえるのだから。























































































