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620万円で落札…かつて「世界一高価な乗用車」だったロールス・ロイス「カマルグ」は80年代ゴージャスを懐かしむ最高の1台!

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: Bonhams

やたらと安価だったマーケット相場価格は、もはや過去のもの?

このほどボナムズ「Scottsdale 2025」オークションに出品されたカマルグは、1979年生産の1台。「シルバー・チャリス(コード9510037)」のボディカラーに「スカーレット」レザーとブラック・カーペットという、このモデルとしては珍しいシックなカラーリングで仕上げられている。

ロールス・ロイス本社工場の記録によれば、カリフォルニア州ニューポートビーチの正規代理店「ロイ・カーバー・ロールス・ロイス(Roy Carver Rolls-Royce)」社を通じて新車で納車されたとのことである。最初のオーナーは医学博士の「マサミ・オガタ」なる人物とインボイスに記載されているものの、保証書によると直後にメキシコ系アメリカ人の実業家で、バハ砂漠を舞台とするデザートレーサーとしても活躍したグスターヴォ・ヴィルドソラの手に渡ったという。

ファクトリーでの整備記録によれば、このカマルグはサンディエゴのディーラーで定期的にメンテナンスされていたようだ。近年は、熱心なロールス・ロイス愛好家の広範なプライベート・コレクションの一部となっており、後期型カマルグにも採用されたアロイホイールを装備するほかは、ほぼオリジナルのコンディションを保っていると思われる。

世界一高級といわれたロールス・ロイスのフラッグシップクーペにふさわしく、このカマルグは電動パワーウインドウやパワーシート、エアコンディショナー、プリーツ入りのブロードクロスのヘッドライニングを装備している。また純正ではないものの、3本スポークの「ナルディ」社製ウッドステアリングホイールや、「ナカミチ」の高級AM/FMカセットステレオなど、1980年代初頭の雰囲気を醸し出している。

エクステリア/インテリアともに極めて良好なコンディションが保たれているようだが、長期にわたって静態展示されているため、走らせる前に一定のメンテナンスおよび整備が必要となるのは間違いのないところである。

リザーブなしで出品されるも推定落札価格に収まる

そのあたりの事情を鑑みて、ボナムズ社は2万5000ドル〜3万5000ドル(邦貨換算約387万円〜約542万円)という、かなり控えめなエスティメート(推定落札価格)を設定した。その上で「Offered Without Reserve」、つまり最低落札価格は設定しなかった。

この「リザーヴなし」という出品スタイルは、確実に落札されることから会場の空気が盛り上がり、エスティメートを超える勢いでビッド(入札)が進むこともあるのがメリット。しかしそのいっぽうで、たとえ出品者の意にそぐわない安値であっても落札されてしまう落とし穴もある。

そしてこの日のオークションでは「最落なし」の効力が良い方向に働いたようで、出品者側が期待していた以上にビッドが進み、終わってみればエスティメート上限を大幅に上回る4万1440ドル、日本円にして約620万円という、これから機関部の大規模な整備も予想されるカマルグとしては、なかなかの高価格で競売人のハンマーが鳴らされることになったのである。

ちなみにR-R カマルグでは、生産最終期にあたる1980年代中盤にごく少数が製作された「リミテッド」のみが高価格をキープしてきた。翻って、今回のハンマープライスは長らく不動状態であることを考慮すれば、以前のリミテッドにも匹敵し得るもの。この個体のコンディションが認められるとともに、カマルグ全体もかつての相場感から底上げが図られているのかもしれない。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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