数十億円も珍しくなくなったクラシックカー
2023年11月、ニューヨークでおこなわれたRMサザビーズ主催のオークションで、フェラーリ「330LM/250 GTO」(1962/シャシー3765 LM)が5170万5000ドルで落札されました。日本円で約78億円。その数字は2023年から2024年に開催されたオークションの中での最高額の落札価格でした(その前年の2022年、メルセデス・ベンツ300SLRが1億4270万ドルで落札。日本円にして180億円超え)。今や、1台の車が数10億円という価格で取引される時代なのです。
クラシックカーマーケットの今を知る一冊
近年、常に大金が飛び交っているクラシックカーのオークションやイベント会場では自動車愛好家よりも、投資家が闊歩している姿をよく見かけるようになった。そのクルマが好きかどうかではなく、そのクルマによってどのくらいの利益がでるかどうかで決めるのだろう。それは絵画や宝石の世界と同じように、オリジナル性、ストーリー性が大優先され、それによって価値が左右される。
そんな状況下、クラシックカーの市場を知るためのバイブルとみなされているのが『Classic Car Auction Year Book』(Historica Selecta出版)だ。
2024年10月、そのClassic Car Auction Year Bookの最新の29版(2023年9月1日〜2024年8月31日まで情報)の出版記念会見が、世界中からクラシックカー関連の人々が集まるイベント、Auto e Moto d’Epoca (ボローニャ)のACIのブースのなかでおこなわれた。
1994年から毎年発行しているClassic Car Auction Year bookは世界中でおこなわれたオークションの結果が網羅され、あらゆる角度からクラシックカー市場を徹底的に分析し、数字をグラフや写真で分かりやすく解説している(英語)。オークションに出品された車両のアルファベット順リストや落札価格はオークション開催時の為替レートに沿って、ドル、ポンド、ユーロで提示されているのでクラシックカーに興味がある人、業界に携わっているひとには興味深い資料本といえるだろう。
著者はマセラティにゆかりのある人物
また、Classic Car Auction Year bookの著者のアドルフォ・オルシ氏は1937年から1968年までマセラティの指揮を執った(アドルフォ/祖父、オマール/父)オルシ家の末裔である。幼い頃から自動車に囲まれて育ったアドルフォ氏の自動車文化に対する情熱は彼のなかで自然と育ち、現在クラシックカーのレストアをコーディネート・監修、自動車をテーマにした数々の展覧会のキュレーター、各地でおこなわれているコンクールデレガンスの審査員を務めている。2019年、イギリスの雑誌『Magneto』で、クラシックカーの世界でもっとも影響力のある50人の人物のひとりに挙げらている、クラシックカー市場でなくてはならない人物のひとりだ。
このイヤーブックもそんな彼のクラシックカーへの情熱が完成へと導いたのであろう。まだクラシックカーの市場が構築されていない90年代からコツコツとオークション情報を集めていた彼の姿が目に浮かぶ。その彼の努力と信念が、今、投資の対象となっているクラシックカー市場でなくてはならない存在と化していったわけである。
2024年発表されたCar Auction Year Book(29版、2023年9月1日〜2024年8月31日までのオークション結果)は世界で行われた101のオークション会場に出品した1万1312台の車両に関しての分析が掲載されている。落札された数は7904台で約70%。総売上金額が21億3700万ドルと、日本円にして3100億円以上になる。なんとその75.28%がアメリカ市場での売上という。2番目はイギリスで5.80%。アメリカがダントツだ。因みに日本は0.06%。また、そのなかで落札価格が100万ドル(約1億4600万円以上)以上の車両は311台に達しているとのこと。
落札された車種ではフェラーリ24%、ポルシェ19%、メルセデス・ベンツ9%と続く。フェラーリの人気はオークションでも根強い。
クラシックカー業界も若返りの風が吹く
またここ最近の統計で顕著に表れているのが若者の台頭という。クラシックカーのコレクターの層も徐々に入れ替わり、若年層も増えてきた。それに伴って落札される車種も若返っている。2000年以降のクルマが36%となっている。時代の流れとともに通常のライブオークションからインターネットも使用する様になり、徐々に高額な車両もインターネットで落札される様になって来たようだ。これも若年層が増えてきた要因もあるだろう。
最後に2023年9月1日〜2024年8月31日までのオークション結果のトップ10を紹介しよう。
1:フェラーリ330LM/250GTO(1962)/5170万5000ドル(邦貨換算約75億4900万円)
2:メルセデス・ベンツAMG Petronas F1 W/04(2013)/1881万5000ドル(邦貨換算約27億4700円)
3:フェラーリ250GT Spyder California SWB(1963)/1787万5000ドル(邦貨換算約26億1000万円)
4:フェラーリ250GT Spyder California SWB(1960)/1705万5000ドル(邦貨換算約24億9000万円)
5:アルファ ロメオ8C 2900B Spider(1938)/1403万ドル(邦貨換算約20億4800万円)
6:フェラーリ410 Sport Spider(1955)/1298万5000ドル(邦貨換算約18億9600万円)
7:メルセデスSimplex 60 PS Roi des Belges Phaeton(1903)/1210万5000ドル(邦貨換算約17億6700万円)
8:フェラーリ 250GT Berlinetta Competizione(1960)/1100万8360ドル(邦貨換算約16億700万円)
9:メルセデス・ベンツCLK-GTR Roadster(2002)/1023万5000ドル(邦貨換算約14億9400万円)
10:フェラーリ312T4(1979)/825万1325ドル(邦貨換算約12億500万円)
1位のフェラーリ330LM /250GTO、3位と4位にランクインした2台の250GT SWBカリフォルニア・スパイダーを含む6台がフェラーリで、メルセデス3台、そしてアルファ ロメオ1台が10位を占めている。
クラシックカー市場に興味をお持ちの方は、この本を手に取って、世界の市場状況を研究するのも良いのではないだろうか。グラフを眺めていると、徐々にクラシックカーの人気車種、国別の価格の変遷が分かる様になる。次のイヤーブックがどう変化するか予想するのも面白いだろう。
※注:本文内の邦貨換算はすべて146円で計算しています。











































