クルマを文化する
REAL CAR CULTURE

AUTO MESSE WEB

クルマを文化する
REAL CAR CULTURE

AUTO MESSE WEB(オートメッセウェブ)

  • TOP
  • CLASSIC
  • メルセデス・ベンツの実験安全車「ESF」ってなに? 安全性の最先端を切り拓いてきた第5世代は小型ロボットも搭載!?【メルセデス安全性Q&A】
CLASSIC
share:

メルセデス・ベンツの実験安全車「ESF」ってなに? 安全性の最先端を切り拓いてきた第5世代は小型ロボットも搭載!?【メルセデス安全性Q&A】

投稿日:

TEXT: 妻谷裕二(TSUMATANI Hiroji)  PHOTO: Mercedes-Benz AG/妻谷コレクション(TSUMATANI Collection)

  • コンパティビリティの哲学を世界で初めて市販車に本格的に導入したのが、1995年に発表したEクラス/W210。つまり、自らの衝撃吸収能力をより高めることで生まれたクラッシャブルゾーンの余裕を相手方の車両と分かち合うということ。写真はスマート フォーツーとEクラス/W210の間で行われたリアルな衝突テスト(2004年)
  • コンパティビリティの哲学を世界で初めて市販車に本格的に導入したのが、1995年に発表したEクラス/W210。つまり、自らの衝撃吸収能力をより高めることで生まれたクラッシャブルゾーンの余裕を相手方の車両と分かち合うということ。写真はEクラス/W201と大型トラックとの衝突テスト
  • 2010年10月、ジンデルフィンゲンのメルセデス・ベンツ・テクノロジー・センター(MTC)でムービングベースの新ドライビング・シミュレーターが正式にオープン
  • このムービングベースシミュレーターは360度スクリーン、高速電気システム、テストセットアップに応じて横方向または縦方向の動きに対応する12mの長さのレールを備え、シミュレーターセルは6つの可動支柱に取り付けられている
  • このムービングベースシミュレーターは360度スクリーン、高速電気システム、テストセットアップに応じて横方向または縦方向の動きに対応する12mの長さのレールを備え、シミュレーターセルは6つの可動支柱に取り付けられている
  • データラインによってドライビング・シミュレーターのコンピュター制御にリンクされている
  • 巨大なドライビング・シミュレーターのドーム内に実験車両がセットされる
  • シングルチャンネルまたはマルチチャンネルのプロジェクションと走行音を伝えるサウンドシステムのおかげで、交通シナリオは非常にリアル。ドライバーは仮想世界に没頭し、実際の道路交通のように行動できる
  • ドライビング・シミュレーターでは仮想世界でのドライビングテストを実施
  • 1971年11月、ジンデルフィンゲンで開催した第2回国際ESF会議でESF 05を発表。当時のミディアムクラス、250/W114シリーズをベースにしたもので、全長はベース車であるW114より655mm長く5340mm。衝突速度80km/hに対応し、フロントエンドに油圧式衝撃吸収装置を搭載
  • ESF 05には「フォースリミッター付き3点式シートベルト」、運転席と助手席に加えて後席にも用意された「SRSエアバッグ」、「ABS」など、実験段階にあった安全装備も数多く搭載
  • 1972年にはESF 13を発表
  • ESF 13の助手席ドアから室内の自動固定式3点式シートベルトが見える
  • 歴代のESF。右からESF 13(1972年)、ESF 22a(1973年)、ESF 24(1974年)、ESF 2009(2009年)。とくにESF 22aは明らかに当時のSクラス/W116(280S/350SE)をベースにしたもので、外観は一変しているが、ボディ・コンストラクションの上ではわずかな補強と、前後に安全バンパーを備えるぐらいの改良に留まる
  • 1974年6月に発表されたESF 24は外観・内装も当時のSクラス/W116とあまり違いがなく、「ESF要求事項を最適な形でバランスさせたもの」といわれ、ESFの開発は一応一段落
  • ESF 24の透視図。Sクラス/W116とあまり相違がないことがよく分かる
  • 2009年に発表されたESF 2009(右)はSクラス ハイブリッド/W221をベース車両としており、現代の重要課題である「環境」に対する強い姿勢を表わしている
  • 衝突時に構造コンポーネントの安定性を瞬時に高める膨張式金属構造
  • 側面衝突のプレセーフ・パルス。乗員をクルマの中心方向に最大5cm移動させ、この装備で乗員の身体にかかる力を約1/3低減する
  • 第5世代の安全実験車であるESF 2019はGLEがベース。自動運転システムの採用はもちろん、開発中のさまざまな安全システムが搭載されている
  • 第5世代の安全実験車ESF 2019でとくにユニークなのが事故警告表示システム。事故が発生した場合、自動的に車両の後方から小型の自走式ロボットが走り出して後方車両に前方が危険な状態であることを警告し、2次衝突事故を防止。また車両のルーフからも三角表示板がポップアップし、同時にリアウインドウにも危険警告をディスプレイ表示する
  • ESF 2019の新しいステアリングホイールは足元のスペースが広く、収納可能。ペダルは格納式で、自動運転モードでの快適性と安全性が向上する
  • コンパティビリティの哲学を世界で初めて市販車に本格的に導入したのが、1995年に発表したEクラス/W210。つまり、自らの衝撃吸収能力をより高めることで生まれたクラッシャブルゾーンの余裕を相手方の車両と分かち合うということ。写真はスマート フォーツーとSクラスの衝突テスト(2014年)
  • 1971年5月に最初のESF公開モデル、ESF 03を発表
  • 2009年に発表されたESF 2009。衝突が避けられないと判断した際に、フロアに内蔵された摩擦コーティング部が路面に押しつけられて補助ブレーキの役割を果たすブレーキバッグ
  • 第5世代の実験安全車ESF 2019は事故発生時、小型の自走式ロボットが後方車両に危険な状態を警告し、2次衝突事故を防止。また車両のルーフからも三角表示板がポップアップする

自車はもちろん、衝突相手の安全も先駆けて追求してきた

メルセデス・ベンツでは1939年から安全性の研究開発をスタートし、「安全なクルマ」というブランド価値を確立するとともに、特許を無料で公開してきました。40年にわたり正規ディーラーで活動した筆者が現役時代にユーザーたちに説明してきた、メルセデス・ベンツの独自の安全性をQ&A方式で具体的に解説。今回は実験安全車「ESF」を中心に紹介します。

メルセデス・ベンツの「コンパティビリティ」とは?

メルセデス・ベンツの「コンパティビリティ(compatibility)」とは、共生・相互安全性の意味です。つまり、衝突時の相手車両や歩行者、自転車などへの影響を考慮し、相互の安全性を可能な限り確保しようという、メルセデス・ベンツ安全哲学の一環です。

メルセデス・ベンツがこのコンパティビリティの哲学を世界で初めて市販車に本格的に導入したのが、1995年に発表した「Eクラス/W210」です。ここで具体化されたのは、自らの衝撃吸収能力をより高めることで生まれたクラッシャブルゾーンの余裕を、相手方の車両と分かち合うということです。

この技術は、エンジンやステアリング機構、フロントサスペンションなどエンジンルーム内の主要メカニズムをインテグラルサポートと呼ばれる別枠に組み付け、それを車両側に取り付けるという特別な構造で実現していました。現在、この考え方はメルセデス・ベンツの全モデルに反映され、衝突時にメルセデス・ベンツの車体前後が相手車両の衝突エネルギーを吸収し、より小さな車両の乗員に及ぶ危険をできる限り回避するように設計されています。

メルセデス・ベンツ全モデルの客室はきわめて頑丈に設計されていますが、自車の保護と相手車両の保護を両立させるために、下記の項目が考慮されています。

・万が一の事故発生時、大型車および小型車の相手のクラッシャブルゾーンが一致してかみ合うように、また乗り上げ/潜り込みの危険を最小化するようにボディを設計すること。

・大型車の場合は、小型車の衝撃を吸収して乗員に対する衝撃を軽減するため、クラッシャブルゾーンをできるだけ長く取るように設計すること。

・構造的に大きさに限界のある小型車の場合、クラッシャブルゾーンの剛性を比較的高く設計して、大型車側のクラッシャブルゾーンを有効に利用できるようにすること。

これらに加えて、メルセデス・ベンツは道路使用者とのコンパティビリティにも基づいて設計しています。

メルセデス・ベンツが用いるドライビング・シミュレーターとは?

メルセデス・ベンツのドライビング・シミュレーターの最大の目的は、事故を起こさないための能動的安全性の追求です。メルセデス・ベンツの最初のドライビング・シミュレーターは完全に自社で開発され、1985年にベルリンで運用が開始されました。

その後、2010年10月、ジンデルフィンゲンのメルセデス・ベンツ・テクノロジー・センター(MTC)でムービングベースの新ドライビング・シミュレーターが正式にオープンしました。このムービングベースシミュレーターは360度スクリーン、高速電気システム、テストセットアップに応じて横方向または縦方向の動きに対応する12mの長さのレールを備え、シミュレーターセルは6つの可動支柱に取り付けられています。

車両制御は、データラインによってドライビング・シミュレーターのコンピュター制御にリンクされています。シングルチャンネルまたはマルチチャンネルのプロジェクションと走行音を伝えるサウンドシステムのおかげで、非常にリアルにドライバーは仮想世界に没頭し、実際の道路交通のように行動できます。

つまり、巨大なドーム内に実験車両をセットし、加速・減速・旋回などの挙動を再現する装置や、その挙動と連動した走行シーンを映し出した360度のパノラマ映像などを使って、被験者であるドライバーに極度の疲労、睡眠不足、飲酒など、実際の走行テストが難しい状況をバーチャルに体験させ、その際の人間の反応や動作などのデーターを収集、分析することができます。

123
すべて表示

 

RECOMMEND

MEDIA CONTENTS

WEB CONTENTS

 

人気記事ランキング

MEDIA CONTENTS

WEB CONTENTS

AMW SPECIAL CONTENTS