タイヤは生死を分ける重要部品
ウクライナ侵略のロシア軍兵器にはウクライナ製のパーツが採用されていると聞きますし、いがみ合うアメリカと中国ですが、お互いの国が開発した技術を流用しあっているとのことですね。
WTSの展示は、いわゆる一般向け博物館のような解説パネルはあまりなく、どちらかというと「技術者のための倉庫」といった雰囲気が漂っています。あくまで、研究、保存、教育のための施設。入館に際してはパスポートとの引き換えに3€が必要になります。たんなる博物館ではなく、名前が表すように研究機関なのです。
それゆえに華やかさはなく冷たい感じがするのですが、これが妙に心地よいのです。無駄な演出はなく、純粋にモノと対話できる時間。まるで、レース前夜のガレージのようでした。
博物館の奥には、図書館のような一角もありました。棚には整然と並ぶ技術書。武器だけでなく、運搬手段である車両やタイヤに関する資料もあって、見れば見るほど、「タイヤは兵器である」という感覚になってきます。たかが黒い輪っか、されど生死を分ける重要部品。その価値を、ここで再確認できたのです。
展示を終えて外に出たとき、コブレンツの街並みは相変わらず穏やかで、ライン川の流れも静かでした。でも私の中には、戦火をくぐったゴムの匂いと、鋼鉄の手触りがしっかりと残っておりました。モータースポーツとは、平和の時代における「闘い」です。そしてその闘いの足元を支えるタイヤとは、いつの時代も、ただの消耗品ではないのだと。
そんなことを考えながら、再びニュルブルクリンクのガレージへ戻りました。レースは続きます。過去の記憶も、未来の速度も、ぜんぶタイヤに刻まれていく——そんな気がしています。







































