フェラーリ・クラシケも取得
フェラーリ本社発行のドキュメントと純正マニュアルがファイリングされ、主要ディーラーでのメンテナンス記録が一部ながら残っているこのF355。2024年8月にローマのクラシックフェラーリ・スペシャリスト「スクデーリア・バルディーニ(Scuderia Baldini)」社にてメンテナンスを受けるとともに、その1ヵ月後には同ワークショップにおいて、新車時代から純正指定されていたのと同じ「ブリヂストン・ポテンザ」タイヤ4本を新品に交換している。
オークションの公式カタログ作成時点で、オドメーターに示される走行距離は4万7696km。2024年12月に取得したばかりという「フェラーリ・クラシケ」の「レッドブック」とともに出品される。さらに現在では「Tubiスタイル」社のエキゾーストシステムが装着されているが、オリジナルのエキゾーストも付属しているとのことであった。
今回の出品に際して、RMサザビーズ欧州本社では
「著名なフェラーリF1ドライバーを最初のオーナーとする来歴を持つ、このクラシケ認定のF355ベルリネッタは、スクーデリア・フェラーリのファンにとって見逃せない1台」
という煽情的なPRフレーズとともに、高値安定で推移しているF355ベルリネッタとしてもやや高めとなる、15万ユーロ~19万(邦貨換算約2445万円〜3095万円)のエスティメート(推定落札価格)を設定していた。
新車価格の約1.8倍の価格でハンマープライス
そして迎えたオークション当日、ミラノ市内の旧い金属加工場を改装。現在では「ミラノ・コレクション」のファッションショーなども開かれているコンベンション施設にて挙行された競売では、エスティメートの範囲内に収まる16万6750ユーロに到達。
つまり日本円に換算すると約2740万円という、新車デビュー当時の定価(日本市場でのベルリネッタは1490万円/GTSは1555万円)の約1.8倍のハンマープライスとなったのだが、この価格のうちの少なくとも数万ユーロは「故ミケーレ・アルボレートの元愛車」という甘美なストーリーがもたらしたもの……? とも思われる。
ジル・ヴィルヌーヴを喪ったあとのエンツォ・フェラーリ翁が、最期まで寵愛したドライバーだったことでも知られるアルボレートは、あの時代を知るイタリアのフェラリスタにとっては、今なお特別な存在なのであろう。

































































































