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1984年にLEDデジタルメーターを採用したアストンマーティン「ラゴンダ」!オークションで未だ継続販売中の理由

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2025 Courtesy of RM Sotheby's

当時の先進的な装備が入手も修理も困難かつオンラインゆえに現状のコンディションが不鮮明

世界の注目を一身に集めた新生アストンマーティン ラゴンダながら、LEDメーターの実用化に手間どり、デリバリーが開始されたのは約1年半後の1978年春となってしまう。それでも、その後1985年にはV8エンジンをインジェクション化し、メーター周辺もわずかながら常識的なスタイルとした「シリーズ3」へと進化。さらに1987年にはボディのエッジをやや丸め、リトラクタブル式ヘッドライトを固定式に改装するなどフェイスリフトを受けた「シリーズ4」へと進化したのち、1990年までにシリーズ総計645台(ほかに617台説など諸説あり)が生産されたといわれている。

このほどRMサザビーズ「Shift Online:North America 2025」オークションに出品されたアストンマーティン ラゴンダは、1984年式。すなわち、アイコニックな前衛的ボディが与えられた最初期モデル「シリーズ2」の最終期に製作された1台ということになる。

このラゴンダは、非常に魅力的なマルーン色の外装に、ブラウンのパイピングが施されたタン・レザーの内装、美しいバーレッド・ウッドのキャッピングが施されている。また、この時代を反映した「NEC」社製自動車電話を残す一方で、USB接続が可能な「コンチネンタル」製ヘッドユニットが装備されている。

また、オークション出品にあたって添付されるドキュメントファイルには、1993年まで遡る販売明細書や通信文書、メモ類、過去の登録証コピー、そして一連の整備インボイスなどが含まれるとのことであった。

アストンマーティン史上ユニークな1台ではあるが…

公式オークションカタログ作成の時点では、わずか2万2437マイル(約3万6000km)しか走っていないとのことながら、2018年にはサスペンションにブレーキ、エンジン、冷却装置、エアコンディショナー、エキゾーストを修理する、大規模なサービスを受けている。

そしてRMサザビーズ北米本社は、自社の公式カタログ内で

「この希少なアストンマーティン・ラゴンダは、注目を集めること間違いなし。コレクションにユニークな1台を加えたい愛好家にとってのマストアイテムとなりつつあります」

と謳いつつ、7万5000ドル~8万5000ドル、現在のレートで日本円に換算すれば約1080万円~約1220万円というエスティメート(推定落札価格)を設定していた。

ところが、この5月28日から6月4日までの1週間を入札受付期間としたオンライン競売では、ビッド(入札)がオーナー側とRMサザビーズ北米本社側で定めたリザーヴ(最低落札価格)には届かなかったことから「No Sale(流札)」に終わり、現在でも営業部門によって「Price Upon Request」、つまりは価格応談にて継続販売とされているようだ。

たしかに、アストンマーティン ラゴンダのマーケット相場価格は「シリーズ1」まで含めて高騰状態にあるのは、このところの販売実績からしても間違いないところではある。だが、翻ってこのオークション出品車両は、最後の重整備から7年もの歳月を経ているという事実が、バイヤー側の購買意欲を促進させなかった可能性が高いと思われる。

LEDデジタルメーターをはじめ、いくつかの重要なパーツが入手困難となっているとも聞くこのモデルでは、やはり現状でのコンディションがなによりも問われるのは当然のこと。あくまでも筆者の私見ながら、現車確認のできないオンライン形式のオークションには、あまり向かない出品ロットだったのかもしれない……? と感じられてしまったのである。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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