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最後の純血アストンマーティン「ヴィラージュ ヴォランテ」!希少なモデルながらも意外なる落札

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2025 Courtesy of RM Sotheby's

さまざまな装備をオリジナル状態でキープしたビスポーク仕様

RMサザビーズ「Cliveden House 2025」オークションの落札者に渡されるドキュメントファイルに内包された工場出荷時のスペックシートによると、出品されたアストンマーティン・ヴィラージュ・ヴォランテは、「ポルシェ・アマゾン・グリーン(Porsche Amazon Green)」という特注のボディカラーに、工場指定のブラック・モヘア製ソフトトップを組み合わせた仕様だ。

豪華なキャビンは「マグノリア(Magnolia)」のコノリー社製レザーハイドで仕立てられ、特注のヘッドレストクッションともどもボディと共色とした「スプルース・グリーン(Spruce Green)」のパイピングおよびファイシア(ダッシュボード上部)。シートと同色とした、マグノリアのウィルトン・カーペット。豊かなバーチウォールナットのウッドキャッピングと、すべてビスポークオーダーによるものである。

1995年5月、英国の最南端チャンネル諸島のジャージー島で納車され、20年近くをこの島で過ごしたのちに英国本土に持ち込まれ、2013年3月26日に再登録された。そして、2016年12月に販売者がこのアストンマーティンを購入するまで、3年間にわたって前オーナーが所有していたことが分かっている。

また、スムースで頑丈な3速オートマチックトランスミッションと、エアコン、クルーズコントロール、ヒーター付き電動調整式フロントシート、切り替え可能なスポーツモード、電動式コンバーチブルルーフなど、多くの人気機能を備えている。

さらに、今回の出品に際しては前述したとおりニューポート・パグネル工場発行のビルドシートと原産地証明書、すべてのオリジナルの書籍と純正マニュアル、サービスブック、スペアキー、および新車としての生産と引き渡しからの請求書を含む、広範な履歴ファイルが付属しているとのことであった。

最低落札額未設定が仇となってしまった

RMサザビーズ欧州本社では

「この希少なコンバーチブルは、珍しいカスタムカラーで仕上げられ、内外装ともに素晴らしいオリジナルコンディションを保っています。さらに、製造以来のあらゆる出来事を網羅した履歴書も付属しています。V8エンジンを搭載した夏場のドライブにふさわしい、価値ある1台」

と高らかにアピールするいっぽうで、理由は不明ながらエスティメート(推定落札価格)は未公表。その上で「Offered Without Reserve」、つまり最低落札価格は設定しなかった。

この「リザーヴなし」という出品スタイルは金額の多寡を問わず確実に落札できることから、とくに人気モデルではオークション会場の雰囲気が盛り上がり、ビッド(入札)が進むことも期待できる。ただしその一方で、たとえビッドが出品者の希望金額まで伸びなくても落札されてしまうという、危険な落とし穴も表裏一体として待ち受けている。

そして注目の競売では後者、出品者側にとってのマイナス面が露呈してしまったようで、終わってみれば4万3700英ポンド、すなわち現在のレートで日本円に換算すると約866万円という、豊富なオプションやコンディションを思えばなかなかリーズナブルな価格で落札に至ったのだ。

このハンマープライスだけで見ると、わりと手の届きやすいモデル? と思われてしまいそうな可能性も否定できない。でも「DB7」以降のモダン・アストンと比べれば、たとえば「フェラーリ412」級かそれ以上に手がかかることは覚悟しておく必要があることも、かつて東京都内に存在したクラシック・アストンのスペシャルショップ店員としての経験から、ご注進させていただきたいところである。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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