充分なメンテナンスを受けてきた記録
今回「THE BONMONT SALE 2025」オークションに出品されたフェラーリ 612スカリエッティは、2004年6月9日にスイスにおけるフェラーリ正規ディーラー「ロリス・ケッセル・オート SA(Loris Kessel Auto)」によって新車として販売され、同月1日に登録された。
現在は登録抹消されているスイスの車両登録証「カルト・グリーズ(Carte Grise)」によると、ブルーのボディにベージュのレザーインテリアの組み合わせが、新車時から維持されているようだ。
サービスブックに記載されているとおり、この612スカリエッティは2005年6月30日、走行距離にして約3000kmで所有者が変更されながらも、その後もスイス国内に残留。前オーナーは、2015年6月にこの個体を購入したことが判っている。
このフェラーリには完全なサービス履歴が付属しているが、その大半、とくに前半を担ったのはスイス・グランツィアの「レーシング・カー(Racing Car)S.A.」社。2006年4月・4433km時から2015年7月・5840km時まで、同社によってメンテナンスが行われたことが、このサービス履歴からわかる。
その後の大規模メンテナンスとしては、2016年9月、走行距離6107kmの時点でスイス・バーゼルの「ニキ・ハスラー(Niki Hasler)」社、および2024年4月、7071kmの時点でプラッテルンの「スタタリウスS.A.クラシックカーズ(Statarius SA Classic Cars)」社にて実施。ハスラー社とスタタリウス社から発行された請求書は、販売に際して添付されるファイル内に保管されている。
くわえて、車両にはナビゲーションシステムマニュアル、フェラーリの販売/サービスネットワークのマニュアル、「フェラーリ・ダイレクトライン(Ferrari Direct Line)」のサービスマニュアル、純正ハイファイシステムの保証カード、オーナーズマニュアル&サービスブック、および2つのキーが付属していたとのことである。
「最低落札価格なし」と強気の出品の結果は?
ただ、いかにクラシックカーのエキスパートであるボナムズ営業部門であっても、現時点においてはまだ「ユーズドカー」というべき612スカリエッティの値付けには苦慮したようで、6万5000スイスフラン~9万5000スイスフラン(邦貨換算約1196万円〜1748万円)という、かなりレンジの広いエスティメート(推定落札価格)を設定。さらにこの出品については、比較的安価なクルマ、あるいは相場価格の確定していないクルマでは定石となる「Offered Without Reserve(最低落札価格なし)」で行うことを決定した。
この「リザーヴなし」という出品スタイルは、金額の多寡を問わず確実に落札されることから競売会場の雰囲気と購買意欲が盛り上がり、ビッド(入札)が進むこともあるのがメリット。しかしそのいっぽうで、たとえビッドが出品者の希望に達するまで伸びなくても、落札されてしまうリスクも不可避的についてくる。
日本国内相場の5割増し、約1490万円で落札
しかし、その不安は杞憂に終わったようで、競売が終わってみれば8万500スイスフラン、現在のレートで日本円に換算すると約1490万円で落札されることになったのだ。
ただしこのハンマープライスは、わが国の中古車マーケットにおいては1000万円前後で取り引きされる事例の多い612スカリエッティとしては、円安が続く為替事情を鑑みても高めといわざるを得ない。
また、日本国内でもこのモデルのタマ数は豊富に存在することから、わざわざ海外から購入する理由があるとするなら、たとえば日本には正規導入されなかったマニュアル仕様車をたまたま入手できる機会を得た(もちろん価格は2倍以上になるだろうが……)など、よほど特別な理由がある場合に限られよう。
とはいえ、国内における612スカリエッティはたしかに安価ではあるのだが、維持については、歴代のV12フェラーリと同じくなかなかの難敵でもある。つまり、同年代のV8フェラーリなどよりも格段にハードルが高い、あくまで「フェラーリ上級者」向けのモデルであることは、ここであらためて明言しておくことにしよう。
































































