約半世紀の時を経て復活した車名
メルセデス・ベンツのモータースポーツ史を語る上で欠かすことのできないのが1950年代の「300SLR」。その名が21世紀に復活したのがSLRマクラーレンです。今回ボナムスのグッドウッド・オークションに登場したのは、そのなかでも特別なメルセデス・ベンツ「722Sロードスター」。しかも往年の名ワークスドライバーであるスターリング・モスのサインや希少なナンバープレートを備え、コレクター垂涎の仕様となっていました。
1955年の栄光の歴史を受け継ぐSLRの名
メルセデス・ベンツのモータースポーツ・ヒストリーにおいて、1955年のミッレミリア総合優勝を飾った「300SLR」は象徴的な存在である。その名が復活したのは2003年。パートナーであったマクラーレン、そして子会社メルセデスAMGとの3社共同開発により誕生したのがSLRマクラーレンだ。
ロングノーズにコンパクトなキャビンという特徴的なスタイルを持つSLRマクラーレンには、当初5439cc V型8気筒スーパーチャージャー付きエンジンが搭載され、最高出力は626psを誇った。さらに顧客からの要望に応え、2006年には650ps仕様の「722エディション」を追加。翌2007年にはオープントップの「ロードスター」が登場した。
限定150台で16年間の走行距離は1万7000km
今回出品されたのは「SLRマクラーレン722Sロードスター」。722という数字は、1955年のミレミリアでスターリング・モスがスタートした午前7時22分、および300SLRのゼッケンに由来する。マクラーレンによって150台限定で生産されたこのモデルは、シリーズのなかでも特別な存在である。
722Sロードスターは5速ATを組み合わせ、0→100km/h加速は3.8秒、0→200km/h加速は10.6秒を実現した。出品車は2009年式で、走行距離は1万7000km弱。全サービス記録が残されており、最新の整備は2025年6月にマクラーレンMSOで実施されている。MoT検査は2026年6月10日まで有効だ。
スターリング・モスがサインしたときの映像も付く
出品車の価値をさらに高めているのは、1950年代にメルセデスのワークスドライバーだったスターリング・モスの直筆サインが残されていることだ。ボナムスによれば、モスがこの車両にサインをする様子を収めた動画もUSBメモリーで付属するという。
さらに「MO55SLR」というライセンス・プレートも見逃せない。英国ではナンバープレートの引き継ぎが可能であり、人気の番号はそれ自体が高値で取引される。性能、デザイン、歴史的価値、趣味性を兼ね備えた1台だった。
エスティメートは50万〜60万ポンド(邦貨換算約7385万〜8860万円)で、多くの入札を集めた。最終落札額は非公表だが、出品者・落札者ともに納得のいく結果だったとみられる。
























































































