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生産台数わずか200台!ランチア「デルタHFインテグラーレEvo I」のホモロゲ仕様が2570万円で落札

生産台数わずか200台!ランチア「デルタHFインテグラーレEvo I」のホモロゲ仕様が2570万円で落札

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2025 Courtesy of RM Sotheby's

「戦う」装備が付いた特別なホモロゲーション用車両

RMサザビーズ「Monterey 2025」オークションに出品されたランチア デルタHFインテグラーレ エヴォルツィオーネは、1991年12月にイタリアの正規ディーラー「アウト2000」社に新車として引き渡された、イタリア本国市場向けの1台である。史上もっとも象徴的で成功したラリーホモロゲーションカーのひとつでありながら、これまで1度もレストアされていない希少な個体である。

納車されたオーナーは、ディーラー側にすべての保護カバーをそのまま残すよう強く要望した。そのため、アウト2000社の代表であるサンドロ・バルカローリは、ダッシュボードカバーに赤いリップスティックでこう書き記した。

「ビニールシートを剥がすべからず。洗車するべからず。エンジンルーム内のスポンジを取り除くべからず」

ホワイトのボディカラーに、淡いグリーンが美しいパーフォレーテッド(通気孔つき)アルカンターラのインテリアを組み合わせたこのエヴォルツィオーネは、RECARO製純正シート、ボッシュ製ABS、日本のクラリオン製Hi-Fiヘッドユニット、エアコン、分割式後部シートなど、極めて希少な工場指定の装備を搭載している。とくにサンルーフをレスオプションとしたことで、そのパフォーマンス志向がさらに強調されている。

さらに、デルタに詳しいランチア専門家によると、この車両は「エヴォルツィオーネ」のなかでも特別な存在で、わずか200台しか製造されなかった「真の」ホモロゲーション用車両のひとつであるとのこと。過酷な負荷がかかるステージで、ターボチャージャーのインタークーラーを冷却するための専用ウォーターバッグを装備しているというのだ。ほとんどの生産車両はシステムが切断された状態で納車されたが、この個体は生産工場で接続されたウォーターバッグシステムをそのまま保持しており、すべてのホースには1991年の日付が刻印されているという、驚くべき事実が判明した。

タイヤさえ交換されず1991年製を装着

あらゆる意味で、この個体はまさに「タイムカプセル」である。最初のオーナーの家族によって30年以上保管されてきたこのデルタは、現在6550kmしか走行しておらず、驚くほど良好な状態を保っている。メカニカル部分については、ランチア本社が認定したスペシャリストによる包括的なフルサービスを受けている一方、工場で付けられたマーク、塗られたワックス、フロアやドアパネルに残る保護ビニールなど、完全にレストアされていない「オリジナル」の状態を保っている。

しかも、タイヤさえ1991年当時のものをまだ装着しており、いかに慎重に保存されてきたかを物語っている。もちろん、落札者がこのクルマ本来のパフォーマンスで走らせるならば、まずはタイヤ交換が必要になるだろう。

ランチア デルタ HF インテグラーレ エヴォルツィオーネは、20世紀後半のもっとも尊敬されるパフォーマンスアイコンのひとつである。ラリー由来のDNA、卓越したバランス、アナログなドライビング体験を兼ね備え、これほどまでにパフォーマンスと魂を兼ね備えたクルマはほとんどないだろう。とくにこの個体は、希少なファクトリー仕様、完璧なオリジナルコンディション、低走行距離、独自の背景、そして最近の手厚いメンテナンスが組み合わさっており、まさに唯一無二の存在である。

今回のオークション出品に際して、RMサザビーズ社は公式カタログ内で

「現存するエヴォルツィオーネのなかでもっとも優れた1台であり、真剣なコレクターにとって真の宝物」

と自賛しつつ、9万ドルから13万ドルという高額なエスティメート(推定落札価格)を設定した。現在のコレクターズカー市場において、インテグラーレ・エヴォルツィオーネの相場価格は最終型のエヴォルツィオーネIIに比べて安価である。しかも、高値がつきやすい限定モデルでもない通常のスタンダード版として、すでにこのエスティメートの段階から、売り手側の強い自信が見受けられた。

そして、8月15日に行われた競売では、入札(ビッド)が予測を上まわる勢いで進み、最終的にはエスティメート上限をはるかに超える17万3600ドルで落札された。現在の為替レートで日本円に換算すれば約2570万円という驚きの高価格で、競売人のハンマーが鳴らされたのである。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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