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50年前の登録から走行距離わずか340km!デ・トマソ「パンテーラL」が約3630万円で落札

50年前の登録から走行距離わずか340km!デ・トマソ「パンテーラL」が約3630万円で落札

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2025 Courtesy of RM Sotheby's

50年間の通算走行距離はわずか340km

こうして、アメリカ市場の法制度とテイストに合わせて独自のモディファイが施された米国市場向け「パンテーラL」だが、フォード・グループのセールス方針転換に合わせて、1975年をもってフォード販売網での販売は中止。結果として、北米独自のアップデートが施されたパンテーラLは、きわめてレアなモデルとなってしまった。

「Monterey 2025」オークションに出品されたパンテーラLは、その希少かつ人気の高いモデルの、もっとも良好な保存状態の1台といえるだろう。公式オークションカタログ作成時点での走行距離は、新車時から213マイル(約340km)に過ぎず、この驚異的な保存状態のデ・トマソは、オリジナル塗装も全体に維持している。さらに、オリジナルの15インチ「カンパニョーロ(Campagnolo)」社製マグネシウムホイールと「グッドイヤー・アリーヴァ(Goodyear Arriva)」タイヤのセットが残されているのは驚きに値する。ただし、このオークションで落札者が今後このクルマを公道で走らせるなら、タイヤを交換する必要はあるだろう。

アメリカ合衆国およびカナダにおける、1967年から2020年までのフォード車の車両履歴を照会できる「デラックス・マルティ(Deluxe Marti)」レポートによると、このパンテーラLは1975年2月27日にノースカロライナ州グリーンズボロの「リース・リンカーン・マーキュリー(Leith Lincoln-Mercury)」社によって、新車として販売された。

新車としてオーダーされた、オリジナルのホワイトの塗装と黒のレザレット(ビニールレザー)内装を現在でも維持。新車時からエアコン、パワーウィンドウ、パワーブレーキ、フルインストルメント、スモークガラスなど、ファンの間では望ましいとされる装備を満載している。

2003年の時点で、このパンテーラLはジョージア州のコレクターが所有しており、その時点での前所有者の車検証には、オドメーターが98マイル(約157km)を示していたことが記されている。それからの数年間、この個体は複数の著名なディーラーの間を移動し、2008年8月のRMオークション「Monterey 2008」にて売却された際にも、オドメーターはやっと3桁に届いた程度とのことだ。

今後はコンクール・デレガンスのノンレストア部門を総なめする?

2011年7月、太平洋北西部のプライベートなファミリーコレクションが、この注目すべきデ・トマソ・パンテーラLを、137マイル(約219km)の走行距離を記した段階で取得。それ以後、15年以上にわたる所有期間中、オドメーターに追加されたマイレージは、慎重に走行された76マイル(約121km)のみとされている。

現時点においては、純正のツールロール、オリジナルホイールとタイヤ(未使用のスペアタイヤを含む)、デラックス・マルティ・レポートを含むヒストリーファイルが車両に付属している。

この、半世紀前からタイムリープしてきたようなデ・トマソ パンテーラLについて、RMサザビーズ北米本社は15万ドルから20万ドル(邦貨換算約2190万円〜2920万円)という、同時代のパンテーラとしては自信ありげなエスティメート(推定落札価格)を設定していた。

そして迎えた8月16日のオークション当日。モントレー市内の大型コンベンションセンター、および今年からは隣接するホテルにも会場を広げて挙行された対面型競売では、ビッド(入札)が順調に伸び、終わってみればエスティメートをはるかに超える24万6400ドル。現在の為替レートで日本円に換算すれば約3630万円で、壇上に立つ競売人のハンマーが鳴らされた。

RMサザビーズは公式オークションカタログで、このパンテーラLについて

「保存状態の良い自動車への評価は、近年、コンクール審査員や一般のエンスージアストの間でますます高まっています。この驚くほどオリジナルなデ・トマソは、展示や鑑賞に値する素晴らしい1台となることでしょう」

と自賛しているが、筆者も概ね賛同だ。

たとえば来年のモントレー・カーウィーク「ペブルビーチ・コンクール・デレガンス」にて、ノンレストア車両で競われる「プリザーヴド」部門に現れたとしても、きっと驚くことはないだろう。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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