クルマの素性が良いから非力だけど高速道路での安定感は抜群
一見すると普通の2ドアクーペフォルムをしているが、バンパーレスのボディに巨大なドライビングランプを備えたランチア「フルヴィア」のラリー仕様。フルビアは、かつてWRCモンテカルロラリーで勝利を収め、「ランチア=ラリー」という方程式を築いた立役者です。日本ではほとんど姿を見かけない希少な名車の魅力を紹介します。
ブラックだったオーバーフェンダーをボディ同色に戻した
2025年のゴールデンウィーク期間中に行われた千葉県佐倉市のサクラオートヒストリーフォーラムはあいにくの雨でしたが、多くのヴィンテージカーが会場に集まりました。会場を歩いていると、一見するとごく一般的な2ドアクーペですが、バンパーもなく、巨大なドライビングランプを装着したスパルタンな1台を発見しました。
フロントに回るとランチアのエンブレムがグリル中央に備わっています。かつてラリーで活躍したランチア フルヴィアです。日本国内に現存する台数はかなり少ないと思われ、こういったクラシックカーのミーティングでもなかなかお目にかかることのない希少車です。このクルマのほかにビッグヒーレーも所有しているというオーナーの横山さんにお話を伺いました。
「このクルマはランチア フルヴィアのシリーズ2で1972年式です。5年ほど前にアメリカから輸入された個体で、私は1年前に入手しました。ラリー仕様にカスタムされているようですが、私が手に入れた時点でこの状態だったので、あえてそのままを維持しているんです。購入したときドア下がりしていたのでチリ合わせをしたのと、オーバーフェンダー部分がブラックだったのでボディ同色にペイントしたのが私が施した唯一のカスタムですね」
ランチア=ラリーの礎を築いた名車のスタンダードモデル
ランチアというと、デルタHFインテグラーレ、その前の037ラリー、ストラトスなど、ラリーで活躍した名車たちを思い浮かべる人が多いでしょう。そんな「ランチア=ラリー」という方程式を確立した功績は、じつはこのフルヴィアの活躍によるところが大きいのです。
4ドアセダンのベルリーナをベースにホイールベースを15cm短縮し、1965年にラインナップに追加されたクーペボディに、1.3Lや1.6LのV型4気筒エンジンDOHCを搭載。フロントを駆動する縦置きFF方式が採用しました。ラリー参戦のためのホットモデルであるフルヴィア ラリー1.6HFは、一般的な量産モデルのボディをベースに前後のクロームメッキバンパーを取り外し、オーバーフェンダーを装着。これに1.6Lのハイパワーエンジンを搭載し、1972年のWRCモンテカルロラリーで優勝も果たしています。横山さんが所有しているのは1972年式で1.3Lエンジンを搭載していることから、通常のフルビアクーぺをラリー仕様にカスタムした個体だと思われます。
シリンダーヘッドが1個のコンパクトな狭角V型4気筒搭載
ほかではあまり採用例のないV型4気筒エンジンは、バンク角が狭く、通常片バンクずつ合計2個必要なシリンダーヘッドを1個にしているのが特徴です。シリンダーは2気筒ずつ互い違いに配置するため、通常の直列4気筒よりも全長がコンパクトとなるメリットがあります。実際にボンネットを開けてエンジンを見せてもらうと、エンジン長はかなり短くなっていました。エンジンブロックは45度傾けて搭載され、SOLEXのサイドドラフトキャブレターが2連装しています。1.3Lと5速マニュアルの組み合わせは、横山さん曰く「力はないけどちゃんと走る」そうです。高速でも安定してまっすぐ走ることから「クルマとしての基本的な作りがしっかりしている」と評価されています。
パーツの供給は意外にも問題ないそうで、イタリア本国から取り寄せれば大抵のパーツが手に入ります。今後は傷だらけのボディをリペイントしたいとのことでした。


















































