1972-1980年:初代Sクラス(W116型)
Sクラスの車名を正式に与えられた
1972年に登場したW116型でSクラスの車名が正式に使われるようになった。これが事実上の初代Sクラスである。じつは筆者が同年にメルセデス・ベンツの輸入車会社に入社したこともあって、とくに愛着があるモデルだ。
最大の特徴は横長ヘッドライトを採用し、安全性の追求がより徹底された。一気に進化したボディの前後衝撃吸収式構造や大型ダブルバンパー、キャビンは頑丈だが衝撃を柔らかく受け止める内装材の採用。当時、社会問題となった自動車の安全性について先進的な回答を示した。ラインナップは280SE、350SE、450SE/SEL(ロングホイールベース)と変わり、エンジンは2.8L、3.5L、4.5Lの3タイプだった。1975年には280HPを発揮する6.9L V8エンジンを搭載した450SEL 6.9も追加された。新Sクラスの450SE/SELは「1973年ヨーロッパのカーオブ・ジ・イヤー」を獲得。1978年には乗用車としてABS(アンチロック・ブレーキシステム)を世界初装備した。
ちなみに、ロールス・ロイスは1965年に高級ビジネス市場に向けて同社としてはコンパクトな「シルバーシャドウ」を投入していた。じつは、初代Sクラス/W116型はそれに対するメルセデス・ベンツの解答だった。

1979-1991年:2代目Sクラス(W126型)
ABSやSRSエアバッグの世界初標準装備化などトピックス満載
オイルショックの1970年代の最後に登場した2代目のSクラスは、全幅を50mm狭めて1820mmとし、空力性能を追求したスタイルや軽量化が注目を集めた。これはもちろん燃費低減が目的である。また、ABS(アンチロック・ブレーキシステム)や運転席SRSエアバックを標準装備するなど、世界初となる革新的な技術を次々と投入して、安全性がさらに進化。最終的に5.6L V8エンジンを設定して圧倒的な動力性能も合わせ、まさに世界のクルマの頂点に君臨した。サスはフロントが変則的なダブルウィッシュボーン(ゼロ・スクラブのステアリング・ジオメトリー)、リアはセミトレーリング・コイルの独立懸架にも一層の磨きが掛かった。
とくに、安全性は他の追従を許さないレベルに達した。つまり、能動的安全性の技術的進歩は顕著であり、ABS(アンチロック・ブレーキシステム)、ASR(アクセレレーション・スキッドコントロール)、そしてリミテッド・デフなどの標準装備化を実現。受動的安全性においてもボティの衝撃吸収能力を一段と向上し、SRSエアバックもドライバー側のみならず助手席側にも装備した。またW126型はとくに走行快適性が重視された。スタートのテールの沈み込みや、制動時のノーズダイブも抑えて常にフラットな姿勢の走行を実現した。

1991-1998年:3代目Sクラス(W140型)
ボディサイズが拡大され2重ガラスなど車内環境を向上
12年ぶりのモデルチェンジとなった3世代目Sクラスは1991年に登場した。フラッシュサーフェイス化を徹底し洗練されたスタイリングのボディは全長5120mmまで大型化され、エンジンはついに6LのV12気筒を搭載する堂々たる存在感を持ったモデルとなった。ナビゲーションや電子制御5速AT、ESP(エレクトロ・スタビリティ・プログラム)、SRSサイドエアバック、さらにBAS(ブレーキアシスト機構)と最新の装備が積極的に投入された。サイドウンドウは2枚の3mm厚ガラスの間に空気層を設けた構造で、曇り難くクリアな視界を確保しつつ高い断熱性と遮音性を実現した。相変わらず四方の見晴らしが良いドライビングポジションが確保され、操舵角が大きいため、はた目で見るよりも小回りが楽だったのである。エンジンやシャシーなどすべての技術・装備・安全性はライバルに一段と差をつけて充実している。










































































