走行距離は23年間でわずか9000km
「Nur」は、ベースとなったVspecⅡおよびMspecに対してエンジンが異なる。N1レース用の高耐久な24U(基準車は05U)と呼ばれるエンジンブロックを採用し、内部には重量公差を整えたムービングパーツを使用することで、フィーリングアップを図っている。同時にタービンもオリジナルのセラミックブレード製から鋳鉄製のN1タービンとなっている。
ヘッドカバーはオリジナルの赤に対して、シリカブレスと呼ばれるゴールドへと変更され、コーションプレートも同様にゴールドとなる。インテリアはスピードメーターが300km/h表示となるのが唯一の識別点だ。ボディカラーにはNur専用色のミレニアムジェイド(JW0)が追加され、このカラーがマーケットでは圧倒的な人気を誇っている。
オークションにエントリーされたモデルは「VspecII」をベースとした718台中の1台で、カラーはQM1である。NISMOの初期バンパー、サイドステップ、リアアンダースポイラー以外はオリジナル状態を維持。ボディは完全にミントコンデションと呼べる極上で、履歴をたどると2002年4月に大阪のオーナーが購入し、2007年末まで所有していた。その後、2008年に登録抹消が行われた後、2024年にドイツに渡るまでの記録がない点から、長期間屋内保管されていたと推定される。そして、ドイツで約1年の時を経て、オークションへと流れついたというわけだ。
落札予想価格は新車価格の10倍と価値を評価されるのは喜ばしいが…
走行距離が1万kmに満たず、さらに2024年には前オーナーの手で大規模なリフレッシュが施されている履歴が残っていることから、エスティメイト(推定落札価格)は35万0000ユーロ〜45万0000ユーロ(邦貨換算約6320万円〜8130万円)というかなり強気の価格設定がなされていた。
しかし、結果は残念ながら「No Sale(流札)」である。現在では同じエスティメイトを提示したまま、ボナムズ社の営業部門による個別販売が継続されているようである。
程度のいいクルマは新車価格の10倍が相場なため、海外流失も加速しており、国内中古車マーケットではR34型スカイラインGT-R Nurを見ることはめっきり減った。国産スポーツカーの価値が評価されること自体は喜ばしいが、さすがに現在の相場は異常だと感じるのは筆者だけではないはずだ。どうか、このモデルが「オークションを徘徊し続けるクルマ」にならないことを願うばかりだ。





























































