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意外な低評価!約4760万円で落札されたランチア・ワークスのサファリ仕様「デルタ HFインテグラーレ」

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: Courtesy of Broad Arrow

リタイアしたことでラリーから遠ざかりオリジナル状態をキープ

1989年シーズンのWRCに向けて、ランチアのワークスチーム「ランチア・スクアドラ・コルセ」のためにアバルトで組まれた19台のデルタHFインテグラーレ8Vのうちの1台が、このほどブロードアロー・オークションズ社「Zoute Concours」オークションに出品された。シャシーNo.#459388のサファリ・ラリー出場車であった。

このクルマは、ケニアにおけるガソリンの質低下に対応して通常のワークスクルマよりも若干ディチューンされた、265psの2L直列4気筒ターボエンジンを搭載。ラフロードに備えて高められたロードクリアランスや強固なアンダーカバー、サイなどの動物との接触に備えた頑強なマスクガード、そして象徴的な「マルティーニ」のカラーリバリーをまとって、この年のWRCシーズン序盤戦、アフリカ・ケニアで開催された過酷なWRC「マルボロ・サファリラリー」において、ドライバーのホルヘ・レカルデとナビゲーターのホルヘ・デル・ブオーノによるクルーが搭乗した。

総距離4500km以上に及ぶこのラリーは、同シーズンで2番目に長かったWRCイベントよりも1000km以上もコース距離が長く、アフリカという未開の大地を舞台とするゆえに、参加車とクルーをサポートするものもほとんどなかった。その過酷な状況により全出場車両の4分の3以上が戦列を離れ、このワークス・デルタHFインテグラーレ8Vも、なんとヤギ(!)と衝突してラジエータを破損。リタイヤを余儀なくされてしまう。

しかし、チームメイトのミキ・ビアジオンとティツィアーノ・シヴィエロが別のデルタHFインテグラーレで優勝を果たしたことにより、すべての努力が無駄になったわけではなかった。この苦難の勝利は、1989年シーズン、ランチアが再びマニュファクチャラーズチャンピオンシップのタイトルを獲得する道筋を築く一助となるのだ。

「マルティーニ・ランチア」ワークスとして参加したクルマで、唯一リタイヤとなったことは、当時の関係者全員にとって残念なことではあったものの、結果としてこのシャシーNo.#459388は、それ以降の過酷なラリーの現場からは遠ざかったままとなった。1990年以降は個人オーナーのコレクションとして、大切に保管されてきた。そして、今日でもほとんど手つかずの状態で、数少ないサファリ特別仕様の元ワークス・デルタHFインテグラーレとして、オリジナルの状態を保っているとのことである。

競売結果はエスティメートにも届かなかった

今回出品されたデルタHFインテグラーレについて、ブロードアロー・オークション社では歴史的価値を力説する一方で、30万ユーロ~40万ユーロ(邦貨換算約5340万円〜7120万円)のエスティメート(推定落札価格)を提示した。

ところが2025年10月10日、ノッケ・ハイストのビーチからほど近い「アプローチ・ゴルフ」敷地内の特設会場で行われた競売ではビッド(入札)の伸びがイマイチだったようで、締め切りの段階に至ってもエスティメート下限に届かない27万250ユーロ、現在のレートで日本円に換算すれば約4760万円という、希少なサファリ仕様の元ワークスHFインテグラーレとしてはリーズナブルでは……? と思えるハンマープライスで、落札されるに至った。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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